22話

「ヨシノ! 私が話した事をちゃんと聞きましたか!」

「わかってるって! ちゃんと聞いているから、顔近いから離れろー!」

「あ……すみません」


 落ち着きを取り戻すエリスは、ベッドの上に座って、夢の話をした。


「私……見覚えのない風景の場所にいる夢を見ました」

「見覚えのない場所?」

「はい……見たことのない街中を歩いていました」

「それって……つまり、エリスが前にいたところの記憶じゃないか?」

「そうと思います」


 エリスはどうやら、自分がいたところの記憶を思い出し、僕は極端にして、エリスの話を耳に通す。


「それが……何処かの建物のビル街で、周囲の人間は全員……私と同じ黒髪をしていました。それに驚いたのは、手をつないでいる男女の人は……私のお父さんとお母さんです」

「なんだって! 顔は見れたか?」

「いいえ……途中で目が覚めましたので」

「そうか……残念……」


 エリスの話しによると、彼女がいたところの場所を語り、僕は極端にする。


「それが……建物のビル街に歩いていました。周囲にいる人間は……私と同じ黒髪でした。そこで一番驚いたのは、私と一緒に手を繋いでいる男女の人が……私のお父さんとお母さんです!」

「なんだって! 顔は見れたか!」

「いいえ……途中で目が覚めましたので」

「そうか……残念」


 エリスが、両親の顔を覚えれば、似顔絵で、居所が認識できるかもしれない。


 でも、エリスが顔を見る直前に、夢から覚めてしまうのが残念だ。


 エリスが夢の話しによると、賑やかな大都市、エリスと同じ黒髪の人間、きっとエリスの故郷に違いない。


 このソレール系宇宙惑星には、黒髪の異星人など殆どおらず、エリスと同じ黒髪の人間は、正体不明アンノウンと一致している。


「見たことのない言語……見たことがない風景、それがお前の故郷なのか?」

「詳しいことが知りません。ですが今も―」

「失礼する!」


 突然、病室の扉から黒の制服を着た男女が入室して来た。


「誰ですの! 話の途中だったのに!」


 エリスは、夢で見た自分の記憶の会話を、邪魔になった黒服の連中を怒鳴りつけた。


「お取込み中にすみません、君がエリス・ザビエルと、新しい適合者……ヨシノ・オオウチだね」

「そうだけど?」

「そうですわ?」

「二人は合体兵器で倒した、テロリストの首謀者の男……アルフレッド・ボールドウィンについて、詳しく聞いてくれ」


 僕とエリスと一緒に、合体兵器で打倒したアルフレッドの事情だ。


「まさか……逃亡したのですか!」

「いいえ、そうではない」

「じゃあなんだ?」

「君たち二人が倒した、„アルフレッド・ボールドウィン”は……地下室で何者かに殺された」

「「なんだって(ですって!)!」」


 ボスであるアルフレッドが死んだ、一体どういうことだ?


 僕たちが地上へ出た後、何者かが、アジトに潜入し、アルフレッドを殺したに違いない。


 ヨシノは気になって、その公安の人間に事情する。


「ちょっと待ってください。僕とエリスが犯人だとでも言いたいのですか?」

「いいえ……そうではありません、ついさっき鑑識クラスが調べた結果……奴らが設置した監視カメラの記録映像が残されていてね……犯人らしい人物が映っています」

「犯人らしい人物?」


 監視カメラ? そういえば、テロリストのアジトに潜入して、廃墟なのにあっちこっちに、天井に防犯装置の監視カメラが設置していた。


「その映像……見せてもらえませんか?」

「ですが……一般人には、お見せにならないので」

「一度だけなら」


 僕は公安の男に、もう一度頼んだ。


 アルフレッドを殺した犯人の顔を確かめないと、一体何処の殺し屋なのか、とっちめてやりたい。


「頼む! 一度だけなら……」

「ヨシノの意見に賛成! 私もお願いします!」


 エリスまで映像を説得する。


「わかった! わかったから!」

「映像を見せてくれるのか!」

「やったですわ!」

「正し……一度だけならご鑑賞を許可します。君らのソーラー・グラスに送信しますので、ご覧になられてください。残酷なところがありますので、無理しないでください」


 リーダーの男は、顔負けで映像を見せることを約束した。しかも一度きりだ、


 後ろにいる小柄の女子生徒に、スライドしながらタップする。


 ソーラー・グラスのレンズ越しに、新着メールが点滅し、僕はタップして地下警備室の映像が映し出された。


 それは思いも寄らぬ映像を目にしてしまう。


(これは……)


 流された映像は、倒れ込んだ僕らを運ぶエリスが、非常階段の入り口の扉を入って、その場から立ち去る。


 何分経つと、突然警備室の入り口から、誰かが入って来た。


 倒れ込むアルフレッドに近づいてくる。コートを羽織った人物を目にする。すると犯人らしい男が振り向くと、僕はソイツの顔を確認するように直視する。


(え……なんで……)


 僕は、その犯人の顔を見ると、衝撃的な目にする。映像に流れる男……いわゆる少年の顔が、はっきりと映し出されていた。


(まさか……なんでアイツが……?)

「ヨシノ?」


 隣にいるエリスは、心配そうな顔付きで僕を見る。するとレンズに映るのを目にして、次にアルフレッドが立ち上がり、犯人の少年に襲い掛かる。


 ところが犯人はコートから、僕と同じ刀を取り出した。


「そこで犯人に殺されるアルフレッドです! 見ない方がー」

「なっ⁉」

「なんですの!」


 犯人は素早く……アルフレッドの喉を切断し、見事に斬首してしまう。


 アルフレッドの頭は、ボールのように転がってしまう、


 あんな一瞬で切り殺すなんて、僕は吐き気するほど憎悪に満ちてしまった。犯人の少年は刀を仕舞い、今度はゴスロリを着た少女が現われ、少年に話しかける。きっと仲間に違いないと思い込む。


(嘘だろ……まさか……)


 こいつ……何処かで見たことがある。僕は頭の回想を巻き戻し、おでこの痣が疼痛とうつう


「イヤー! なんですのー! 頭が……頭がー!」


 映像からェルフレッドの首が飛んでしまい、奴は倒れ込んで、噴射のように出血し、絶命してしまう。それを見たエリスは化け物を見たような目で悲鳴を上げる。暴れ出す


「落ち着きなさい! エリス・ザビエル!」


 暴れ出すエリスを、落ち着きを取り戻す公安の女子生徒、犯人の容姿を確認すると、黒いコートを羽織って、白いシャツと青いズボン、長いブーツを履いていた。エリスと同じ長い黒い髪、それからオクタゴン型の眼鏡を掛けていた。僕の記憶は巻き戻すように思い出す。


(オクタゴンの黒い眼鏡……アイツ……)


 7年前の事件……僕の家族を皆殺しにした、義理の弟であるハルタだ。


(まさかハルタが! 一体どうして……)


 ソーラー・グラスのレンズに映る監視カメラは一瞬で、プツンと黒く染まって途切れた。






「なんですか! こんな残酷な映像を見せるなんて!」

「申し訳ございません!」


 映像を見終えた直後、私は暴れるように女子数人に取り押さえられて怒号し、そのリーダーの男に抗議する。


「本当にすまなかった! 殺害する場面が映ってー」

「見せられないものなら先に言ってくださいよ! そうですよね……ヨシノさーってアレ?」


 リーダーの話をスルーし、後ろにいるヨシノも抗議の手伝いを声を掛けたら……


「ヨシノ……? どうしたの?」


 振り向くと、ヨシノは沈黙した顔で、その映像を一時停止している。犯人の少年の顔を座視ざしする。


 するとヨシノは立ち上がって、公安の生徒に声を掛ける。


「ちょっといいかな?」

「なんですか?」


 いきなり質問責めをするヨシノ、


「この少年は……一体何をしたのですか?」

「彼は、全ソレール系によって、指名手配をしている少年です……」

「指名手配?」


 まさかアルフレッドを殺した少年は、ソレール全惑星で、有名な凶悪犯だったとは、ヨシノは頷くように、頭を抱え込むように話を続ける。


「その少年の名前は……」


 今度はその犯人の名前を話した。すると公安のリーダーの男は、神妙な顔付きをする。


「名前は……ハルタです!」

「⁉」

(え……それって……?)


 この少年がハルタ君! ヨシノさんの弟さんがソレール系全惑星で指名手配している凶悪犯……。


「奴は何をしたのですか!」

「多数の犯罪は様々ですけど、爆破、襲撃、暗殺などを起こす、とても危険人物です」

「なんだって⁉ 一体どういうー」

「ヨシノ!」

「⁉」


 ヨシノさんの家族が殺された直後に、弟さんが7年間も悪事を染めていたとは、私は興奮する彼を落ち着きを取り戻そうと、彼の背後で身体を抱きしめた。


「エリス……何をするんだ?」

「落ち着いてください。そんなに大声を出したら……」

「エリス……見られているよ」

「すみません……失礼な事を……」


 公安の生徒はポカーンとした顔で、僕とエリスを凝視する。すると、リーダーの男はヤレヤレとした態度を取る。


「全く……妙な事をしでがして……」

「ウッ……」

「すみません……」

「でも……少しは落ち着いたか……ヨシノ・オオウチ」

「はい……」


 公安に説教されるヨシノは、沈黙した顔をする。私はヨシノの身体を離した。


「エリス……ゴメン!」

「私こそ……申し訳ございません」


 ヨシノさんは、腰まで下げて私に謝る。


 エリスも僕と同じような仕草で、僕に謝った。


「話はそれだけですか?」

「はい……」


 もうこれ以上、話す訳にはいけない、ヨシノの弟であるハルタ君の事が気になります。


「なら……仕方がない」

「ご迷惑おかけしてすみません」


 私は、公安の生徒に謝罪した。


「その……ごめんなさい」


 その次に、隣にいるヨシノも、公安に謝罪する。


「いいえ、これぐらいは、では……我々はこれで……失礼します!」


 公安クラスの人達は、扉を開いて、病室から出ていく。


「ヨシノ……」


 私は落ち込むヨシノが心配で、彼に向けて声を掛ける。


「大丈夫……これくらいどうってことないよ」

「そう……」


 するとヨシノさんは、扉の方へ向かう。


「ヨシノさん? 何処へ行かれるのですか?」

「気分転換に……飲み物を、エリスも一緒にどう……」

「そうですわね、何か飲めば落ち着きますわ」

「そうだね、行こう」

「はい!」


 私もヨシノと一緒に、病室から出て行く。





 僕は、エリスと一緒に、ロビーにあるストアマシンで、購入したばかりのジュースを飲んでいた。


「プハーッ! やっぱりメロンさーだーは最高だー!」

「ヨシノさん! 甘くて美味しいですわ! こういう飲み物は生まれて初めてですわ!」


 テーブル席に座って、ヨシノと同じジュースを飲むエリス、ドリンク販売ストアマシンで、マネーカードを差し込んだ。


 僕は『メロンサイダー』を買った、エリスはサイダーを凝視して、彼女も『メロンサイダー』を選んで購入した。


 サイダーを飲んだエリスは、いきなり嬉しく号泣し始める。


 これを飲むのが初めてなのかと、余程よほど美味しかったのか。


 飲み干した後、空の缶ジュースを一旦テーブルに置く、公安から聞かされたハルタについて、会話の続きをする。


「エリス……話しづらいけど」

「わたっています。ハルタさんの事ですよね」


 ハルタがこの7年間ずっと、ソレール系のテロと過激な運動を起こしていたとは、なんで今まで気づかなかったんだ。


「弟のハルタさんが、指名手配になっているとは……」

「エリスも知らなかったのか?」

「ええ……」


 僕は、お師匠様と一緒に、7年間図ずっと、冒険の旅に出ていた頃、ニュースや新聞を閲覧していない、ずっと修業と放浪を続けていた。


 なんで今更、ハルタが指名手配になっていたとは、心から衝撃的にショックを受けた。


 もしも……ハルタが暴走をしてしまったら、無関係で罪のない人間が被害に及ぶ、僕は決心した。


「エリス!」

「なんですか?」

「僕もソーラー学園の転校をするよ!」

「えっ!?」


 ソーラー・グラスの適合者専用が通う育成教育機関……〝ソーラー学園〟の転校する事を決意した。














































 





















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る