21話

「ここは……?」


 私は目を覚ますと、見たことがない場所に立っていた。


「私は確か……ゼニガタと一緒に、アルフレッドの暴走を食い止めて……」


 ここはどうやら、辺りは何もない白い風景しか写らなかった。


「私……もう死後の世界に来たのかしら?」


 私はもう既に、死後の世界と言われる、あの世へ来てしまったのかしら。


「お姉ちゃん‼」


 私は耳の奥から、聞き覚えのある声がした。


 振り向くと、全員私と同じ金髪で、ヴィーナス星人である。


 それは、私の知る人物であった。


「ジャンヌ姉」


 パーマの髪型をした12歳の少年、


「お姉ちゃん‼」


 坊ちゃんの髪型をした10歳の少年、


「姉ちゃん」


 ツンツンな短髪をした8歳の少年、


「おねえちゃ~ん」


 短めなウインテールをした6歳の少女、


 死んでいった大事な、4人の弟と妹である。


「ピエール、ジャン、ジャック、カトリーヌ‼」


 私は幼くして、テロに巻き込まれ、死んでいった可愛い弟と妹である。


 私はその嬉しさで、家族である4人の弟と妹に抱き着いた。


「みんな……会いたかった」

「お姉ちゃん、苦しいよ……」

「ジャンヌ」

「また会えたね」

「えっ……?」


 今度は二人組の男女が現われ、金髪の中年の男と、金髪の若い女性である。


 私の大好きなお父さんとお母さんだ。


「お父さん……お母さん……」

「随分と、大きくなったわね……」

「かなり立派に育ったな″

「あっ……″


 両親はこっちに近づいて、泣きながら私に抱きしめた。


 両親がいるというのは、私はもう死後の世界に来てしまったのか、


 アルフレッドの暴走を止める為、意識が途絶えた記憶はあるけど。


「ジャンヌ……お願いがあるけど……」

「なあに?」


 母が涙目をしながら、私の顔を、優しく触れてくれた。


「あなたはね、まだここに来てはいけないの」

「どうして……? 私……もう死んじゃったんだよ」

「いいえ、あなたはまだ死んでいない。今はやるべきことが、一つある」

「やること?」

「あなたは友達のいる現世に戻って」

「どうして? お父さんとお母さんと、それに……弟と妹に会えたのに」


 もうここは死後の世界、私は目の前にいる家族を、もう離れたくないのに、どうして、


「お前には、その友達の悲しい姿を見せられないだろう」

「え……?」


 友達……私には、モニカ以外、誰一人もいないのに、どうして?


「姉ちゃん!」

「ジャンヌ姉」

「姉ちゃん」

「おねえちゃーん」


 するとお父さんとお母さんの二人と、四人の弟と妹が、全員両手を一斉に、ジャンヌを突き飛ばした。


「キャア!?」


 倒れ込むところが、奈落の底に落とされるように、家族の姿を見つめる。


「お前には、まだ……やれることがあるぞ」

「ジャンヌ、あなたは現世で、頑張るのよ」

「「「「頑張ってね、お姉ちゃん」」」」


 別れの挨拶あいさつを言うように、手を振る弟と妹、ニッコリと笑う父と母の姿をながめる。


「待ってー!」


 私は段々下へと落ちていき、家族の姿が、小さくなるように消えてしまい、辺りが暗闇と化し、視界が見えなくなるように、気を失った。








「みんな!」


 目を覚めると、私は病院のベッドで寝かされていた。


「ここは……痛ッ!?」


 私は起き上がろうとしたら、突然身体銃が痛みを感じた。


 右腕と頭には、包帯ほうたいが巻かれていて、左腕と右足からギプスが張られていて、怪我をしていた。


「そういえば……私は奴を……」

「ジャンヌ!」

「ひゃあ⁉」


 風紀委員のモニカが、私の顔の近くまで、ベッドに居座っていた。私とモニカは、病院の衣服を着ていた。


「モニカ! 私達……」

「奴にやられて、私とあなたは怪我をして病院に運ばれて、あなたが目が覚めないから……その……」

「目が覚めなかった? それにアイツらはどうしたの!?」

「大丈夫、奴らはもう一掃検挙に成功したから」

「そう……」


 私とモニカは、どうやら奴の暴走によって、無茶をしてしまい、大怪我を負ってしまったには覚えている。


「私……夢でも見たのかしら?」

「何を?」

「私の家族と会う夢」


 気を失った途中、死んだ家族と再会した事と、まさか私は本当に幽体離脱ゆうたいりだつでもしたのかも。


 ところが、私がお母さんと弟と妹たちの感触は、本物みたいだった。


「家族ねえ……」

「そういえば、モニカの家族はどんな人?」

「治安維持で働いていてて、それに父と母と兄妹は忙しいから、学園から連絡を取っていた」

「そう……よかった」


 モニカの家族は、治安維持機関ちあんいじきかんの仕事をしていて、いわゆる公務員である。


 モニカは家族に会えない時期が多く、電話でしか連絡する事しかない。それに引き換え私は、ずっと独りぼっちだ。


「ジャンヌ」

「今度は何?」


 ベッドに立ち上がるモニカは、こっちに近づいて来て、私に話しかける。


「ジャンヌに会わせたい人達がいるの」

「誰なの?」



 私に会いたい人とは、一体。


「みんなー入ってきてー!」

「「「「「「「オオオオオ―――!!!!」」」」」」」


 病室の扉から入って来たのは、何十人のソーラー学園の生徒達だ、こんなに大勢、私の会いたい人達なの。


「いやあ……ジャンヌが無事で、よかったー!」


 最初に声を掛けて来たのは、赤毛のポニーテールをしているアリス星人、身長は150㎝の小柄で、子供みたいな童顔、くりっとした丸い目、桃色の唇に、アゴの下にスカーフを巻いている。


 丸い眼鏡のソーラー・グラスを掛けていた。


「あなた……私と同じスパイクラスの、サクラ・サルトビ⁉」

「覚えてくれてありがとう」


 サクラは私と同じスパイクラスで、忍者の家系と言う先祖代々伝わっている。


 彼女はソーラー・グラスの適合者で、忍術の能力を保っている。


 サクラは面白がり屋さんで、しゅういから メガネザルッ娘とあだ名で呼ばれている。


「ジャンヌ、あなたがこんな無茶をするとは思わなかった。心配して駆けつけたわ」

「サクラ……」


 サクラはどうやら、私の事を心配してくれたとは。


「それは悲しいレディーを……放っておけないからさ」

「君は……」


 金髪をヴィーナス星人の男子生徒が、花を摘まんで、プレイボーイな態度を取った。


 長身で七三分けのパーマ、ネクタイの代わりに、赤いリボン型を首に絞めて、紳士風な性格を持っている。


 それにソーラー・グラスは、シャープなサングラスを掛けている。


「ジェームズ?」

「そうだよ、名前を憶えてくれてありがとうね……ジャンヌ」


 彼はジェイムズ・ポンド、私と同じスパイクラスのイケメン男子である。


 私はジェイムズが持ってきたお見舞いの花を受け取った。


「君を心配するのは、紳士の役目だから」

「あなたは任務の続行で、生物兵器の向上に潜入する為に、エルメス星に行ったんじゃあ……?」

「君が意識不明を聞いて、ひとつ残らず、工場ごと潰して……任務遂行した後、急いで駆けつけたからさ」

「お前……無茶なことで、この女たらしが~」


 ジャンヌはヤレヤレと言いつつ、アイツはソーラー学園のイケメンで、女性を守るプレイボーイで、よくナンパ癖が直らない。


 ジェイムズが任務先の、非合法な生物兵器を開発している。奴がエルメス星に向かったのは、ほんの一週間前で、任務先の工場を一掃するとは、


「ジェイムズとサクラ、ジャンヌが困っているですよ」

「「ハナコ!」」


 サクラとジェイムズの背後から、真面目そうな眼鏡ッ娘が現われた。


「随分と派手に暴れたの……」


 ハナコはアリス星人で、赤毛の長いツインテールに、小柄で几帳面きちょうめんな態度を取る。顔はとろりとした目つきに、桃色の唇、アゴの下に、サクラと同じようにスカーフを巻いている。


 それに彼女は黒い丸眼鏡のソーラー・グラスを掛けている。


 ハナコもサクラと同じ忍者の能力を持っている。ソーラー・グラスで、忍者の武器を使用する事が多い。


「ハナコ……どうして?」

「お主の怪我をしたり、人質にされたのと聞いて……駆けつけたのでござる」

「そう……ハハハ」

「ハナコって本当に……生真面目きまじめ過ぎるのよ」

「ちょっ⁉ 何言ってるの……サクラ―!」


 ハナコとサクラは幼馴染で、昔はライバル関係として噂になっていた。


「ホラッ⁉ お前のスパイクラスのみんなも、あなたの事が心配で、ここまでお見舞いしに来たんだ」

「えっ⁉」

「数か月前……スパイクラスの連中が、ジャンヌの事が心配してたんだ」

「それって……」

「だから……お前は一人じゃない」

「⁉」


 私はあの世でお父さんの言葉を思い出す、〝待っている友達〝とは、モニカだけでなく、スパイクラスのみんなも一緒だ。


「みんなずっと私の事を心配してくれたの?」

「「「うん」」」


 私は何がなんだか、目がかすむように、視界がボヤけてしまい、鼻から鼻水が垂れ流そうとしている。


「アレ……なんで……?」

「ちょっとジャンヌ!」

「どうしたの⁉」

「マイレディー‼」


 今度は目に涙が出てきた。


「ううん……なんでもない……」


 私は嬉しかった。誰も声を掛けてくれないと思ったら、本当に心配してくれるとは、


 私は驚喜きょうきして、涙を流してしまった。


「失礼する」


 その随喜ずいきする中、病室の扉から、黒服の男女が入室してきた。


「誰ですか?」


 ハナコはその黒服連中の、リーダー格の男に話し掛ける


「私はソレール星際公安の物だ、そこの怪我をしている二人に、聞き込みをしたい」


 公安……私達に何が事情徴収なら、私とモニカは、その人たちに近づいた。


「私ですか」

「何かご用件は?」

「君らが潜入した、テロリストのアジトについてだが……」


 男は神妙した顔付きで、ソーラー・グラスのサングラスで、何かをタップしながらスライドしている。


「資料は、君らのソーラー・グラスに送信したから、確かめるがいい」


 私とモニカは、隣に置いてある、ソーラー・グラスを装着して、すぐに起動する。


 私はその新着メールの一件が点滅し、それをタップするように押した。


「これは……」

「そんな……」


 メールを開くと、そこに書かれていたのは、テロの首謀者しゅぼうしゃ、アルフレッドの〝死亡確認〝が認識されていた。


「そのテロリストの首謀者、アルフレッド・ボールドウィンが、廃墟の地下室で殺された。君たちのソーラー・グラスで、通った形跡が見つかった」

「なんだって!?」

「何か心当たりはあるか?」

「私とモニカは、奴を食い止める為、怪我を負わせて、気を失いました。そうよねモニカ……」

「そうよね……」


 私達が掛けているソーラー・グラスには、GPSの記録が残されている。


「二人と一緒に行動していた、エリス・ザビエルとヨシノ・オオウチと共にいただろう」

「そうですが……?」

「そんな、二人は殺しなどしない!」

「わかっている。我々はタダ聞き込みをするだけだから、それに奴らの監視カメラの記録が映し出されているから安心しろ!」

「本当ですか!」

「本当だ!」


 私達が気を失っている中、ヨシノとエリスが、アルフレッドの殺人の容疑にかかってしまうとは、


 ところがアジトである廃墟には、テロリストが設置した監視カメラが起動して、今までの記録映像が残されているに違いない。


 映像が流せば、二人のぎぬが晴れると一安心だ、事情徴収をした公安の連中は、後ろに振り向いて、退室しようとした。


「我々はこれで失礼する」


 ドアを開いて、全員病室から出て行った。


「ジャンヌ……二人の容疑にならないように……祈りましょう……」

「そうだね」


 私はモニカと手をつなぐように、二人を犯人でないと、心から誓った。







 ヨシノとエリスが、アルフレッドが率いるテロリストグループの一掃してからの数時間前、アリス星の星都・トーエでは……


「殺された?」

『はい、アジトの地下室でアルフレッド・ボールドウィンが首を斬られて殺されているのを発見しました。そこで奴を応戦した風紀委員のモニカ・ゼニガタと、そこで潜入捜査を行ったスパイクラスのジャンヌ・ダリアの事情徴収をして、彼女らは怪我をして、気を失っただけだと主張……』

「一緒に行動した残りの二人は……?」

『関連した結果、人質にされたエリス・ザビエルと、ソーラー・グラスの適合した例の少年……ヨシノ・オオウチです』

「転校生? それってどういうことかしら?」

『彼女の適合者の任務と、テロリストのアジトが、同じ町だと一致しました』

「成る程……」


 私はタワーホテルの最上階で、輝く街を眺めながら窓を見下ろす。


 私の掛けている色レンズをしたスクエアフレームのソーラー・グラスで、現場にいる生徒から連絡だ。


 アリス星のとある地方都市にテロリストの潜入捜査をした学園生徒の救出、及び人質にされたソーラー・グラスの適合者の任務中の学園生徒も含まれている。


 その検挙済みで、事件解決の報告の連絡をしてきた。


『一刻も早く……連行ですか?』

「いいや……君らの仕事が残っているだろう。後の事は公安の奴らに任せる。鑑識かんしきクラスが発見したテロリストの監視カメラの映像の記録が残っているだろう」

『そうですか?』

「おいおい、生徒会長である私に疑うのか?」

『いいえ……滅相めっそうもございません』


 電話の相手は恐る恐る声を上げる。


「じゃあ……後をよろしく」

『了解!」


 電話マークをOFFをタップして、通話を切った。


 私はソーラー・グラスのサングラスを取り外し、一旦いったんテーブルに置く。


「面白くなってきたね」


 私は窓に近づき、このアリス星の星都と言われるトーエの街をもう一度眺める。


(それに……任務先でのターゲットの少年は、7年前の事件の被害者の少年とは)


 テーブルに置いてある紙の資料を閲覧えつらんすると、7年前のとある企業一族殺害事件……オオウチ一家殺人事件の被害者の少年……ヨシノ・オオウチ、我々の学園に転校するのか?


(それに……引き取り人は……あの女か……)


 7年前に失踪した女教師の顔写真、ヨシノ・オオウチを引き取って行方を眩ましたのか……









「エリス……僕と怪我をしている二人を運ぶために……」


 僕は、同室で眠るエリスの顔を眺めた。


 気が付くと、病室のベッドで寝かされて、過労で何かで気を失い、エリスとモニカとジャンヌと三人と一緒に、病院に運ばれた。


 ソーラー・グラスの影響なのか、それに隣のベッドに眠るエリスは、ぐっすりと爆睡している。


「それにしても、寝顔可愛いな……」


 エリスの眠っている顔は、とても可愛すぎて、指で顔の頬にツンツンしてみたい気分だ。


「ちょっとだけなら……」


 僕は人差し指で、エリスの顔を触れようとした。


「ヒャア⁉」

「ウワッ⁉」


 突然、エリスが起き上がり、びっくりするほどの表情をしている。


「ヨシノさん‼」

「ハイ⁉」


 起き上がったエリスは、僕の顔に近づく。


「聞いてください! 私……夢を見ました‼」

「見たって何が⁉」


 エリスはびっくりした顔で、僕に話しかける。


「見たことがない街と……私の家族です!」

「え?」


 エリスが見た夢とは、彼女の過去の記憶であった。










































































































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