20話

「ヨシノー!」

「エリスー!」


 エリスの口づけをした影響えいきょうで、合体兵器の必殺技を起動きどうし、一緒に持っているロングソードも発光した。


『凄いですね、これが愛の力でしょうか?』

「そうです! 全力全開でいきますわ!」

「無茶はするなよ、しかし……風が強く吹くよな」


 クロスロングソードからとても強烈な突風が吹いて、髪の毛が揺れるように、しっかりと掴まる。


「風が段々と弱まりますわね」

「うん、そうだね……」


 風が治まると、クロスロングソードの剣の全体が、金色のように輝いている。


「勇者になったみたいだ」

「これは私が入信しているアースラー教に伝わると言われている。『勇者と神様の剣』の神話しんわに出てくる、伝説でんせつの剣みたいですわ!」

「神話……伝説の剣……それって『勇者と神様の剣』を知っているのか?」

「はい。私がいた修道院しゅうどういんで、神父様からよく聞かされました」

「それ……僕も知っている」


 大昔に伝わるアースラー教の神話『勇者と神様の剣』とは、悪魔と魔物軍団を退治する為に、神様が勇者に授けた剣、悪魔あくま魔物まものを退治する物語。これが僕とエリスが持っているクロスロングソードである。


 悪魔あくま魔物まもの軍団ぐんだん打倒だとうした後、神様は忽然こつぜんと姿を消す、勇者の所持する剣も、光のように消えてしまった。まさかこのロングソードが、神様だと言い伝えられている。


(このクロスロングソードが……神様だとしたら)


 僕の刀のタネちゃんと、エリスの十字架じゅうじかの合体兵器が、ロングソードが、神様の剣に類似るいじしている。

 

「このクロスロングソード、神様だったりして……」

「そんな馬鹿な事を、これはフィクションの出来事ですわ」

「そうだな」

「話は置いといて、今すぐに必殺技を出しましょう」


 僕とエリスは、クロスロングソードで、暴走ぼうそう状態じょうたいのアルフレッドに立ち向かおうとした。


「えーい貴様ら! 俺に……しかと……する……なあ――!」


 アルフレッドは苛立いらだつ顔つきで、僕らが見ていないすきに、持っている武器が、いつの間にドデカい棒になっていた。


「クソガ……クソガ―――!」


 アイツは本気で僕達に向かって、おそい掛かってくる。


「エリス! 一緒に必殺技を!」

「ハイ!」


 僕とエリスの持っている、合体兵器の金色のクロスロングソードのパワーがみなぎっていく。


「クソッタレ―!」


 アルフレッドは怒号どごうな声を上げて、右と左をブンブンと振り続ける。


「エリス!」

「ヨシノ!」

「「発動はつどう! エリス・ザビエルとヨシノ・オオウチの合体兵器、クロスロングソード必殺技ひっさつわざ!」」


ヨシノとエリスは二人で一緒に、必殺技の言葉を放った。


「「愛の鉄槌てっつい剣!」」


 クロスロングソードの剣先から出た光線を思い切って振った。形は流星のように変化して、アルフレッドに向けていく。


「なああ……なんなんだー! これは――!」


 アルフレッドは、必殺技の光のビームを見て、驚愕な顔付きをする。


「そんな体(てい)たらくな物で当たってたまるか――!」


 デカいこん棒を持ちながら、アルフレッドは向きの方向を変えて、必殺技を交わした。


 しかし、必殺技の【愛の鉄槌てっつい剣】は、アルフレッドのかわした方向へと進行した。


「なに、こっちに―ギャアアアア!」


 アルフレッドは僕とエリスが放った光線を、袋のように包まれて、スペース機のように飛ばされてしまう。


「ヒャアアー!」

すご迫力はくりょくだ!」


 必殺技を出した影響えいきょうで、風がいきおいよくいて、その光線に当たったアルフレッドは、非常階段の入り口まで飛んで行き、見事に激突げきとつしてしまう。


「グホ――!」


 ぶつかった直後、黒い砂煙けむり萬栄まんえいし、アルフレッドは一瞬いっしゅん沈黙ちんもくする。


「アイツ……死んだか?」

「ヨシノ、足は少し動いていますけど大丈夫です。それに非常階段のドアが」


 非常階段のドアに倒れ込んで、口からあわを吹いて気絶するアルフレッド、合体兵器の必殺技を発動したおかげで、瓦礫がれきふさがれた非常階段のドアは、奴の巨体きょたいのおかげで、ドアが壊れて穴が開けた。


「やりましたわ、ヨシノ、早く先輩達を」

「わか……った……アレッ……?」

「ヨシノ?」


 隣にいるヨシノは、疲れた顔をしながらひたいあぶらあせを流し、足がガクンとして、クラクラする態度を取る。


 私とヨシノの合体武器は、発光が出現しながら輝いて、粒子粒に変化し、合体兵器は解除した。


 私の十字架が手前に現れ、ヨシノの武器である刀のタネちゃんも、元の武器の姿に戻った。


「戻りましたわ、それにヨシノ、大丈夫ですの?」

「だい……じょう……ぶ……」


 隣にいるヨシノは、うなずくように、ばたんと倒れ込む。


「ヨシノ―!」


 私は慌てて、転倒したヨシノを近づいた。


「大丈夫ヨシノ!」

「エリス……」


 ヨシノは苦しそうな顔をして、突然と目をつぶってしまい、失神しっしんする。


「どうしましょうヨシノが……そうですわ! ソーラー・グラスで容態を検査しを!」


 私は自分のソーラー・グラスで、テンプルのすじのボタンを押して、レンズ越しに映し出されるヨシノの体内の状況を確認した。


「ヨシノの生体は大丈夫ですけど、ダメージが大きすぎますわ!」


 ヨシノのダメージは、背中とさっきアルフレッドに殴られた部分で、傷を負わせたに違いない。


「どうすれば……早く人を呼ばないと……」


 私はあせりながら、ソーラー・グラスで連絡を取ろうとしたが、でも、応援を呼んで待機したら、三人の命が尽きるかもしれない。


「ええーい! こうなったら! 私が運ぶしかないのですわー!」


 私は気を失っているヨシノ達三人を、おんぶするようにかついだ。


「グッ!? 三人を持つのに、結構重いですわ……」


 私は足をガクガクしながら、怪我をしている三人を踏ん張っておんぶした。


「私は……諦めません」


 私は謝堂々と、重傷を負った三人をおんぶして、少しは辛いけど、これも人助け、我慢しながら階段へと上った。











「ご苦労様です」

有無うむ……後の事は我々われわれに任せてくれたまえ」


 一人の警察官の上司らしい中年の男が、話を付けているらしい、どうやら現場は制圧済みで、テロリスト集団は全員、両手両足をなわしばられて拘束こうそくしている。


「あの……すみません!」

「なんだね君は?」

「私は……その……」


 私は緊張きんちょうし過ぎて、怖くて声が出ない。


「彼女はソーラー学園の転校する予定の生徒、シア・ノグチです」


 突然ながら、隣にいたサリアに、私の代わりに話してしまった。


「何故君はここにいるんだね?」

「え……と、実は……その……」

「もちろん人探しです‼」


 またもやサリアに、なんで彼女は私の話す場面を横取りするのかな。


「誰を探しているんだ?」

「今から説明します」


 何故こんな事になっているのか、


 私は目が覚めると、病院のベッドで寝かされていた。


 一体何が起こったのかというと、看護婦から話によると、どうやら私は偽警察官によって睡眠薬で眠らせて、エリスが誘拐された。


 それを切っ掛けに、私とアンジロウは地元の警察官に保護された。


 急いで現場へ直行したいけど、急にソーラー・グラスが鳴って、電話に出ると、ソーラー学園の生徒であるサリアからだった。


 彼女から聞いた話によると、ヨシノ君はエリスを助けに行く為、ソーラー・グラスでエリスの居所を突き止め、ヨシノはすぐに現場へ向かった。


 私はすぐに、アンジロウを叩き起こし、病院に残っているソーラー学園の生徒に、現場へ向かいたいと頼み込む。


 それを聞いた生徒は仕方なく、アンジロウと一緒に現場へ向かった。


 山道さんどうで待機しているサリアと遭遇そうぐうし、彼女の案内で、廃墟へと向かった。


 到着後、私はヨシノ君を探した。


 けど……何処にもいなかった。


(ヨシノ君のバカ、私に黙って、エリスを助けに行くなんて)


 ヨシノ君を見つけたら、即刻そっこく説教してやる。


「それにしても、ヨシノ君は何処に」

「ちゃんと見つかりますよ」

「そうですか……」


 サリアは心配してくれる声を掛けられ、私は周囲を見回し、ヨシノ君がいるのか探索した。


 しかし、何処にも彼の姿が見当たらなかった。


「おい! 誰か来たぞ!」


 ソーラー学園の生徒が、何か見つけたように、指を刺している。


 私は顔を振り向くと、そこには人影が写っていた。


「まさか……」


 私は影の方へ駆けつけた。


「おい君! 行っちゃ駄目だ‼」

「退いてください!」


 隊員らしい人間が止めようとするが、すぐに手で突き飛ばした。


(もしかして……)


 私はその人影の近くまで走った。


 それは……私の知る人物だった。


 その人影は、光を浴びて、姿を現した。


「なんのこれしきー!」


 顔を赤くして、三人をおんぶする、眼鏡っ娘のエリスだった。


「えっ……エリスさん? それになんでヨシノ君をおんぶしているの?」


 エリスの背中に担いでいるのは、私の知るクラスメイトである問題児のヨシノ君と、ソーラー学園の高等部の風紀委員の女子、それから私を人質にしてくれた、テロリストの仲間であるイケメンメガネ男子風紀委員をおんぶしていた。


「エリスさん! どうしてこんな事になっているのですか!」


 私は断末魔のように叫んで、エリスに駆けつける。


「え……シアさん? どうしてあなたがここに?」

「それはコッチの台詞よ! それにヨシノ君の身に何が!?」

「話せば……その……」


 エリスはクラクラするように、額に汗が流し込み、ばたんと倒れ込んだ。


「大丈夫!?」


 エリスは三人の下敷きになりながら、倒れ込んでしまった。


「大変……誰か来てー!」


 声を上げて、他の人達を呼び出す。


 何人かの生徒が、ヨシノ君たち四人に近づく。彼らはソーラー・グラスで、生体反応と怪我の状況を調べているらしい。


 何もやることがない。周囲には、火事などの黒い煙が萬栄まんえいし、どうやら戦争状態になっていたらしい。


 辺りには重症患者が多く、派手に暴れたなと心から思った。私は怪我をしている人たちを放っておけなかった。


「私もソーラー・グラスの出番かも」


 私はソーラー・グラスのテンプルのすじのボタンを押して、オリジナル医療器具を取り出し、医者として怪我人を治療しなければならない。


 私は怪我人をいるところへ向かった、医療係の生徒に話した。


「すみません! 私もお手伝いします!」

「そうか、助かったよ、そこを頼む!」

「わかりました!」


 これからは人の為に頑張らないと、私は聴診器を付けて、けが人の治療を始めた。






「シアさん、元気で活動しています……」

「そうね、彼女自身だから、それに……アンジロウとシアさんが、ヨシノ先輩とエリス先輩のデートを、勝手に尾行とは……」

「ウッ……何故それを?」

「気づいてたからね」


 サリアの人間観察は、とても鋭すぎる。


「それにしても、全員無事でよかったですね」

「はい……」







「ク……ソ……なぜ……だ……」


 俺はあのクソガキのせいで吹き飛ばされてしまい、身体中に痛みが響いて、瀕死ひんし状態だ。


「完璧……だった……はず……じゃあ……」


 奴からもらった人工ソーラー・グラスは、奴に立つはずなのに、なんで水で壊れるのか、聞いた事がない。


「やっぱり復讐する計画は駄目だったね、残念……」

「!?」


 ドアの向こうから、ガキみたいな声が聞こえた。


 その方向へ直視したが、暗闇で姿がとても見えない。


「やあやあアルフレッド君、元気かな~?」

「お前は!?」


 電気の光を照らし、姿が現すと、スマイルな顔付きをするコイツが、俺に人工ソーラー・グラスを渡した奴だった。


 黒いシャツと青いズボン、身体を隠すほどの長い黒のコートを羽織って、黒いブーツを履いている。


 それから体格は小柄な細身、しかも年齢はまたガキだ、女に勘違いする程、モンゴ人の顔付きをしている。


 人質にした小娘と、同じ髪色をしていた。


 それは……黒髪だった。


 奴はオクタゴンフレームの黒い眼鏡を掛けていた。人工ではなく、正真正銘しょうしんしょうめいのソーラー・グラスである。


「やはり君には、復讐するのはできなかったね~」

「何が言いたいんだ!」

「そうだったね、君のお父さんは、この廃墟はいきょになっている収容所の所長を務めていたよね」

「うるさい……」


 俺は痛みを耐えながら、邪魔な砂利じゃりを退かし、震えながら立ち上がった。


「何故だ! ソーラー・グラスで適合者になれるはずなのに! どうしてくれるんだ‼」

「適合者……フフフ……」

「何がおかしい!?」


 奴は嘲笑ちょうしょうした顔で、指先ゆびさきで、眼鏡のテンプルをクイッと押す。


「本物の人工ソーラー・グラスを渡すと思うか」

「何⁉ まさか偽物なのか!」

「本物を渡しても、意味がないだろう。君みたいな野蛮人やばんじんは、適合者じゃない癖に」


 再び嘲笑う。俺はアイツにコケにされるとは、ムカつく……クソー。


「貴様―! 俺を馬鹿にしてー!」


 俺はブチ切れて、コケにしたそいつに襲い掛かった。


「バカだね……君は用済みだよ……」


 ――ザシュ。


 視界から、ゴロゴロと転がるようにかたむき、すると自分の身体までもが見えている。


 目がかすむように、黒く染まるように、意識を失うように途絶えた。


「君は最低最悪な男だ」


 僕は持っている刀で、僕に襲い掛かるアルフレッドを、素早く振って、首を斬り落とした。


 アルフレッドの頭は、ボールのように、ゴロゴロと転がっていく。


「ハルタ……」

「なんだ、クロウ?」


  突然僕の背後から、クロウが呼びかけた。


 彼女は自分の首につながるコードで、防犯カメラをハッキングして、収容所辺りを覗き込んでいた。


「学園と治安の奴らが、こっちに向かってくるよ」

「そうか」


 僕は刀を仕舞って、薄汚い部屋を立ち去ろうとした。


「またいつか、再会する時が来るよ……ヨシノ兄さん」


 僕はクロウと共に、廃墟を脱出した。







































































































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