§ 4

助け舟?

 I氏の メッセージには、イベントでの お礼と

最近 気持ちが落ち込んでしまって、と 弱気な内容が

書かれていました。

 2ヶ月前から 心機一転、本拠地を変えて やっていこうと

意気込んでおられたのに、今回のイベントで 他の方々の活躍を

伺って、自分のこの先の 見通しが無い事に、愕然としたとか。

私に向かって エラそうな事を言ってしまって、気恥ずかしい等

そういう事が書かれていました。

 何か 嘆いておられる様に、伝わってきたんです。


 それで

G へ LINEをして

『何か I氏が落ち込んでいるみたい』

「何で?」

『他のアーティストさん達が、今後の予定があるのに 自分は無いとか』

「そんなの関係無いやろ」

『私も そう思う』

『何て 返事させてもらったらイイんやろ』

「何も言えんしな」

『電話してもイイ?』

「おん」


 G へ電話

『先程は 寒い中、お付き合い下さって すみません』

「いえ」

「で?Iさん 何て?」

『ぅ…ン イベントで、色々な方と 知り合えて、懇親会で 他の方々の今後の活動とか 聞いたみたいやわ。そしたら 自分は、この先 何も決まって無いし、店をオープンさせたけど、人は来ないし。奥地へ行った事で 先行き不安になったんじゃ?』

「店 上手く行ってないんや?」

『と言っても、ちゃんとオープンして 1ヶ月も経ってないでしょ』

「そうやよな」


 と I氏の事を心配して、話し続けてた。


 そのうち こういうのは、直接話しを聞いた方が良いだろうと思い。

『I氏に 電話してみようと思うけど?』

「いいんじゃない」

『してみる』

「うん」



 I氏へ 電話。


 思った以上に 落ち込んでいる声でした。

堰切った様に ドンドンお話して下さる、I氏。

何か もの凄く、不安と気弱さが 押し寄せてくる感じです。

 これからの方針等も 聞かせて下さったのですが、どう考えても

今の時点で それをやるのは、意味が無い様に感じる事を話されていて。

 この状態の人に 否定をするのは、酷過ぎると思って 全部頷いて

聞いておいた。


 大体 話し終わられた感じだったので

『これは 一消費者としての意見として、お聞き頂きたいのですが…』

と、気になっている事と 伝えた。

 すると

「それは 思ってもなかった事や、これから 考えてみる」と

お返事下さった。

 おおよその話したい事が 話せた所為か、少し 落ち着いておらる様に

感じました。


 電話が 終わってから、再び G へ電話した。

I氏から 聞いた事と、そのまま伝えた。G

「それに 勤しんでも仕方ないやろ」

と、私が 意味が無いと思った事に、G も賛同してくれた。

『それで 精一杯、これだけは…って、一消費者としてって、伝えさせてもらったんや』と言うと

「それは イイんと違う?」

『ね、大丈夫やよね』

「おん」

「それにしても 心配やなぁ、店 開いて、これからやって言うのに、そんなやと」

『そうなんよねぇ』



 と、ホンの数時間前に 決定的な、別れ話をしてきた間柄なのかと思う程

ごく普通に 会話をしていて、不思議な様な・うれしい様な感じがしていて。

I氏の事が 気がかりだけど、それより G が 何を思っているのか

それが気になった。



 翌日。

1日 色々と考えて、I氏に 提案できる事を思いついて

それを プレゼン出来る様に、資料作りに 励んだ。


 月曜日、子供を 学校へ送り出して、すぐ後に 私も車を出した。

I氏のお店へ向かったんです。あまり 早朝に連絡すると、悪いと思い。

途中の所から 電話を入れました。

 午後から 大阪の学校へ、教室で 行かないイケナイから時間無いと

言われましたが。もう向かっているし、時間は そんなに取りませんから

と、無理に押し掛ける事にしました。


 I氏のお店は 素敵な街並みの一角にあります。

とても趣きのある建物で、I氏のこだわりが感じられます。

オープン用に 改装した、板とかむき出しで 雑然としていますが。

I氏の 折り目正しそうな性格が良く表れている内装です。


 出かける準備をしながら、私の話しを聞いて下さいました。

あんまり 時間を取ってはイケナイと思って、資料も作ってきたし

それを見てもらえれば、それで良いと思ったので 概要だけ伝えたのですが。

 I氏は ドンドン、感極まったのか 泣いてしまわれて。

私は そこまでのつもりは無かったから、焦ってしまいましたけど

それだけ 感受性の豊かな方なんだと感じ、人の話しも 聞ける人だと

わかって。それら を大事にして下さいと伝えて、時間も無いので

退散した。


 帰宅して、G へも、I氏の所へ行った事を LINEしておいた。

I氏は G がお祝いに送った、花の鉢植えを 大切にして、店先に置いて

いた事も、報告しました。



 更に 翌日。

I氏から お礼のメッセージが届き、私の話の中の事を

やってみると、お言葉があったんです。

 私としては I氏が、これから勤しもうとしていた仕事よりも

今後の展望として、良い方向に行けると信じている品だったので

形になれば良いなっと思っています。と お返事しました。


 その翌日

今度は M氏から、頼まれていた 作品の色付けが完了して

発送できますよ。と知らせが来たんです。丁度良いところに!

っと思って。M氏へも 電話させて下さいとお願いして。

 I氏の事を 相談させてもらったんです。そしたら

「お店出したって言ってたから 上手くいってるのかと思った」

と、

「それじゃ 一度、I氏のお店行ってみようかな」

「それがてら そのうち、連絡入れてみるわ」

と言って下さったんです。


 M氏は I氏が、兄と慕っている方です。

分野は違うけれども、憧れの存在の様ですし、きっと 私なんかが

言うより心強いに違いないと思って。


 それから1週間後 お仕事が早い事!さすが 職人です。

私の伝えた事を 形にして見せて下さったんです。


 I氏の代表作から 発想した品なんですけど。

それを 作り上げて

「こういうので どうでしょう?」って。

それを 確認しに、再度 I氏のお店へ行きました。

 ちょっとだけ エラそうに、本当に 思った事を伝えさせてもらって。

「何で そういうのわかるの? 〇〇さんは?」

と言われたけど

『一消費者目線で そう思うからです。それと 製作サイドの事もわかるにはわかりますからね』と


 I氏は ずっと、裏方で 職人としてやって来られた方です。

技に関しては 格別素晴らしいモノをもっておられる事はわかりますけど

消費者目線では無い品に 走ってしまっている事。

 私は 少なからず 経営者として、作り手としても経験もある事から

出来るだけ 中間の立場で話しが出来る様に努めた事が

I氏にも 理解して頂けるモノになったんだと思います。

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