変化の時

 その年の 春過ぎた頃。

G は また、次の段階の 技能試験を受ける事になりました。

更に 難しくなる試験です。


 私も あの体験教室以来、教室を開く為の準備の方が あまり

進んでいなくて。出来れば この年の秋くらいには、教室始動できると

良いし。去年と同じ コンテストへ応募する事も考えはいましたが。

一ランク上のコンテストを考えても… っと、他のコンテストの要項を

調べたりしましたが、どれも ピンとくるのが無く。


 まさか… と思いつつ、日本の中では 最高峰のコンテストになるのですが

そのコンテストの要項も見てみました。本気ではなかったんですよ、本当に。

 けど テーマを見た時に、頭へ イメージがポン!っと、やってきたんです。

恐れ多すぎると思ったんだけど、応募するのは 自由だろうと、チャレンジ

してみる事にしました。


 最高峰だから 企業が、名だたるデザイナーに デザインさせ、もちろん

クラフトだって 一流の方が担当して、企業の名をうる為に 開催される様な

コンテストです。

 私などが 到底出せるコンテストでは無いです。それでも 何か出してみたい

と思うんですよね…不思議と。


 製作にあたり G にも、アドバイスをもらいたかったけど。G も 頑張ってるし

迷惑かけたら イケナイので。先生はもとより 同じ教室の友達になった

ビーズの先生の免許を持っている人や、前回の 受賞式で知り合った

シルバークレイの技術を持っている人にも、アドバイスをもらって。

頭にやってきた イメージを形にしていく為、色々と 工夫してみた。


 結構 大作で、パーツをいくつも 作らなければならず、本気で

毎日 毎日、作業に明け暮れました。そんな感じだから 辛いし

出したところで、何か 成果出るとも思えないし、止めようかと

何度も思ったんです。

 だけど その度に、何だか 作らなければイケナイという気持ちに

駆られて、無意識に 作業台へ向かっている自分がいました。


 何とかかんとか 締切ギリギリに、提出する事ができました。

もうかなり 意識が朦朧としてました。


 

 まぁ 何の賞にも、引っ掛かって無いだろうと 期待してなかった

んですけど… 一応は 発表の時に、チェックしてみましたよ。

!!!!!

 入賞してました。しかも 一番下の賞ではなかったです。

もちろん 上位でも無いですがw 一番下の賞だって 入っても無い

だろうってレベルなつもりだったから、本当に 信じられなかったです。


 びっくりして G に報告。

G の方も 技能試験 合格していました。

2人で 喜び合いました。また 双方、ランクアップです。


 私は 去年出した コンテストへ向けての品にも、即 取りかかりました。

残念ながら こちらのコンテストへの品は、仕上げが甘かったので パーツが

外れてしまっていた様で、何の賞も頂けませんでした。



ーーーーー



 秋に 大阪で行われる、アートイベントの情報を G がキャッチしてきました。

そのイベントに あのH氏が 招待参加される!それは 行かないと!!

 多岐にわたる分野のアート作品が 一挙に観れるイベントです。

しかも 作家さんとも会えると言うのです。H氏だけでなく 気になっていた

アーティストさんとも 直接話しが出来るかもしれないんです。


 喜び勇んで 行きました。


 真っ先に H氏の所へ行きました。やはり 人気が高くて、行列です。

入場制限もかかっていて、やっと 観れました。私は 作品を手にいれた時に

ガラスケース越しでしたけど、展示してある作品の いくつかは、東京で

観れている品だったので、新しい作品に 目がいきました。

 G は、初めて観るから 興奮している様でした。行列していて あんまり

ゆっくりは観れなかったです。


 他の作家さんの方へも 行きました。

あまりに 観れる所が多いので、すごく疲れてしまいました。だけど

もう一度 H氏の所へ行きたいと、G が言うから、再度 そちらへ向かいました。

 今度は そこまで行列してなくて。もう少し 入場できると思った瞬間

私の前から G が消えたんです。へっ?!っと思っていると…

 まさか?と思って 中を見てみたら、G が 中に居るんです。

??っと思ったら H氏が居られて、話しかけているんです。他の方は

H氏が そこに居る事に、気付いていないみたいで 作品にばかり目が

いってる様子。H氏も H氏で、アーティスト気取りではなく ごくフツーな感じ。

気さくに G と話してます。

 私も 傍に行って、『写真撮ってあげようか?』と言うと、いつもなら

写真撮られるのを 嫌がるG も、この時ばかりは 「撮って♪」と

嬉しそう。2ショットの写真を 撮りましたよ。私も お話しさせて頂きました。

 G は 自慢気に、自分が持っている作品の画像を H氏に見せたり

H氏の今回の 作品製作についての話が聞けたりして、金属を使った品も

あったので、それについては こちらもちょっとは専門家だから

話が盛り上がったりして、とても 有意義な時間を過ごさせてもらえました。


 このイベントでは、他 M氏 と I氏の作品とかが、気になっていて。

G は M氏の作品を購入していましたし、私は I氏の作品を買いました。

その他も ちょこっと手に入れたりしたんですけどね。

  すごい良かったねぇ~♪ と、感激しきりで 会場を後にしました。




 だけど…


 興奮状態で 駅へ向う道で、G がポツリと

「おやじに 癌が見つかったんや…」と

『えっ?!』

「…」

『どんな感じなの?』

「あんまり よぉはないみたいや、週明けから 入院するんやと」

『 … 』


 その後 いつもの様に、ご飯を 食べに行き、ラブホへ行って。

お互いに 購入してきた品を見せ合いっこしたりして、楽しくしては

いたんだけど。G は いつもと変わらない感じにはしてたと思う。

 やはり 気にしている感じは、キレイに払拭できてる訳は無く…

そして 私にも、これから以降 何かが 変わっていく気がして

言い知れない 不安が…



 不安はありましたが、その年の 年末直前小旅行が叶って。

G は何か、思うところあるのか… 写経がしてみたいと グッズを

買いに行ったりして、ホテルの部屋で 2人して、写経したりしました。


 年を越して、毎度 欠かさずの、誕生日プレゼントを贈って。

それから しばらくは、私の方で 子供の受験シーズンに入っていったから

あんまり 会えたりはしなかったんだけど。

 G が写経の事を 教えてくれたお蔭で、私も 受験に向けて

何かできたら良いかと思って、写経をする事にして 受験日まで、続けました。


 無事に 子供は、合格する事が出来て。ちょっと 落ち着いたから

G と会う事にしました。

 

 いつもの様に 夕方から会って、ご飯を 食べに行きました。そこで G が

「今度 女の子とデートしてくるわ」と

私は 女の子という表現で、てっきり 仕事場の社長さん所の娘さんの事かと

思いました。以前から 仲良くしていて、ワックスを教えたりしている

小学生の子がいると聞いていたし、バレンタイン後の事だったので。

『社長さんとこの子と?』

「いや つれに紹介してもらった子」

『えっ いくつの人?』

「32やったかな?」

『そういう歳の人を 女の子って、どうなの』

と 頑張って、冷静にいようと 精一杯の言葉。

「女の子は女の子やろ」

『え?どこの人 〇〇(G の地元)の人?』

「おん」

『どこで デートするの?大阪?』

「そこまでは 言わんよw」

『そやね』

 ・

 ・

 ・

『それで 私は何かしないとイケナイ?』

「いや 別に」

『そっか』


 何とか 平静な感じで話そうと、いっぱいっぱいだったけど

とうとう来るべき時が来たと思って、とても 平常心では居れなかった。

 食事を済ませて、いつも通り ラブホへ行きました。G は何も

変わった様子無かったです。


 私は この日、言おうと決めていた事があったんです。

それが こういう風に、話し運ぶだなんて 思っても無かったけど

考えてきた事を 伝えるのに、適したシチュエーションになってしまって。


 ベッドで ひとしきり愛し合った後で

『私と 終わらせる時、最後は 絶対に会ってね』

「何やそれ」

『付き合うとか 決めてきて無いから、別れるとかじゃないでしょっ?だから 終わる時には、会って言って欲しいの』

「… ぉん」

『約束ね』

「ン」


 お父さんの具合が 良くないみたいなのは、何となく 聞けていたから

そうなってくると、きっと G の周りの環境が、変わってくるだろうなと

思っていたので、次に会った時には こう伝えておこうと思っていたんです。

 その日に 「デートをしてくる」と、報告を受けるなんて…

タイミング良すぎるのも どうなの?

 何はともあれ 私の気持ちは伝えれたから良かった。



 

 デートの日は 聞いていました。

それからは 時々、電話しても 話中の事があったりしました。

 それでも 私と話せる時は、G は変わらず 話しをしていたし

月1ペースで会うのも そのまま続いていました。


 ある日 G が、私の好きな アーティストの展覧会情報をくれて。

以前 G は、その方の作品には 興味が無いと言ってたんだけど

「行ってみる」と言ってくれて、行く約束をしました。

 会場に 近い所で 待ち合わせをして、私は 少し遅れてしまって。

荷物もあったから、コインロッカーに預けて 行こうとした時。

 G のTシャツの襟口付近が 変な赤色になっているのに、気付きました。

『えっ?何?これ?』

G は あっバレた;; みたいな顔して、焦ってたけど

「昨日 俺、作業中に倒れたんや」

『はっ?』

「作業してたら 身体が動かんようになって」

『はぁ~?』

「そしたら 社長が、治療院へ連れっててくれて、そこの治療の痕なんや」

『何それ』

『そんなで 出てきて、大丈夫なの?』

「おん 昨日、それから ずっと寝てたし」

『はぁ~ アカンやろ?』

「大丈夫や」

『えー』

「大丈夫やって!行こう」

『えっ 辛かったら、いいよ?一人で行けるし』

「大丈夫や」

『んなら 辛かったら言ってよ?』

「おお」

って事で 行きました。 


 展覧会へ行って、その日 私は帰らないとイケナイ日だったし。

G だって、本調子では無いだろうから、早めに帰ろうと思ったんだけど。

とても暑い日で 結構 歩いたりしたので、私の方が 具合悪くなって。

そのつもり無かったんだけど、お願いして 少し 休む提案をしました。

 そしたら あっさりOKしてくれて、ラブホへ。

とにかく シャワーが浴びたかったので、早々に シャワーへ。

まさか G もシャワーに入ってくるとは思ってなかったので

びっくりしたんだけど

「ほらっ こんなんなってるんや」

と 背中を見せてもらったら、一面 丸い吸盤で、吸われた痕。

『いやぁ~ん こんなすごいんや!こんなで よう出てきたね』

「全然 大丈夫や」

『そんな すぐ治るの?どんな名医なのよ』

「社長も あんまり教えたくないんやって言ってたw」

とか 会話して、そんなになっても 会いに出てきてくれた事に

私は 嬉しさを覚えていました。


 帰るまで あんまり時間無くて、とにかく 休もうよと

ベッドに横になって、休ませようと思ったんだけど。

G からのモーションで、結局 sexしちゃったの。この時 久々に

挿入の最中に、私 また寝ちゃってました。

『ゲっ また寝てた』

「寝てたな」

『ごめっ 疲れてるみたいなんやわ』

「それは 俺の方やろw」

『そうやねw』

等と 話して、果てるとこまでして ホテルを出ました。



 それから しばらくして、G は 少し前から、趣味感覚で始めていた

エッグアートの技術を用いて、その時に行った アーティストの絵を

模写したのを作ったと、画像を送って 見せてくれた。

 それはそれは 見事な作品で、模写の技術も すごかったし、

薄い殻に これを表現するなんて、びっくりものでした。

 

 次に会った時 そのエッグアートの品を、私に下さったんです。

物凄く うれしかったです。

 その時も しっかりじっくり愛してくれたし。

ここまで してくれるんだもの、もしかして もう一人の方とは

上手くいってないのかもしれないな と思う様になっていました。


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