§ 2

通学

 その4日後も 授業を受けに。まだ 指は完治してなかったけど

やりたくて 仕方なかったんです。


 学校へ通うのに 電車で、乗継など合わせて2時間かかります。

朝の授業を受けようと思うと 早く出ないとイケナイです。でも

まだ 子供が、小学校へ通っている時だったので。送り出してから

出ないと心配だったし、子供が 帰宅するまでに、私も帰って

おきたかったから、授業を受けて 即!帰らないと 間に合わない

感じです。


 電車の時間上 学校には、早く着いてしまいます。

やれる事があるなら やっているのですが、まだ 習い始めだから

やる事が わからなくて。喫煙所へ 一服しにいきました。

 そこには すでに1人、タバコを吸って 座っておられました。

軽く会釈する程度に 挨拶して、私も 煙草を…  そのうち

ドンドンと 若い方々が、入ってきて 結構、人で埋まる感じになりました。


 若いパワーに圧倒され おばさんが居れる場所ではなくなったから

退散。教室に 戻って、授業開始を待ちました。

 私の通う教室は 週に1・2度来るコースの方々ばかりで

どちらかというと、趣味の感じで 習っておられる方が多く

主婦や 退職後の男性とか、年齢層は やや高めです。

 喫煙所に 入ってこられていた、若い方々は 

毎日通うコースの様で、高校や大学卒の方々等が

就職を目的に 来られているみたいで、教室も別です。


 授業は そんな厳格な感じでなく、おしゃべりしたり

飲み物程度は 好きに摂ったりしても良く、ラフな感じなんだけど。

 やっている事が、隣に居ても その人が、何をしているか 

わからない位 緻密な作業をしているので、安易に声をかけて 

手元を狂わせてはいけないから。誰も話したりしない

ただ 工具の音だけが響く中で、黙々と 作業をするのです。

 

 そして 私は、帰りも急いで帰らないと 電車に間に合わないので

さっさと片付けて帰り支度をしなければならず。先生以外 

誰とも会話する事なく、帰宅。そんな感じです。

 私自身も 技術の習得が目的だから、別に 友達とか作りたい

気持ちは無いから、そういう感じでも 全然良かったのですが。

ただやっぱり 集中するから、休憩時間とかは 息抜きに 

タバコが吸いたくなります。なので 喫煙所へだけは、寄って帰りたい。

 若者クラスが 終わる前に、一服にちょっと寄って

学校を出る様にしてました。


 いつも 朝、喫煙所に行くと 先にいる人 この方とは 

挨拶する程度なので、1本 タバコ吸う位の間は、気にせず 

居れるんだけど。吸い終わる頃には、ドッっと 人で溢れる様になる。

 一度 帰りの楽しみの、一服をしようと 降りて行った時。

すでに 若者クラスが終わっていたみたいで、喫煙所が 

いっぱいになっていた。うぅ~吸いたかったなっと思って

後ずさりした時に。 朝 会う人が、座っていた椅子を 譲ってくれた。

私は いえ結構ですって、ジェスチャーで伝えたんだけど

皆も 一斉にこっち見るから、何か 断れなくて

じゃ・じゃぁ~って 1本だけ吸う事にした。

 何か その時の、譲ってくれる感じが うれしい気がして。


 その翌週の学校の日は バレンタインデーの前日の日だったんです。

なので モデル君へ、チョコを作ってもって行こうっと 計画していました。

それのミニバージョンなら、その朝 会う方へも

お礼に、お渡ししても良いかな?っと思って。

それと 教わっている先生の分も作りました。



 学校の日。

その日に 限って、電車が遅れて 授業へも遅れて行く事になりました。

なので せっかく、喫煙所の方へと持ってきた分は 渡せないまま

学校の先生にだけは お渡しして。

 なるべく 子供が帰ってきてしまう前に、帰宅したかったから

大急ぎで モデル君のバイト先へ。行ってみると モデル君は

出勤して無かった。あぁ~っ;;と 思ったけれども

店員さんに 確認すると、夜 出勤の番だと教えて下さったので

『これお渡し下さい』と預けて、帰りました。


 モデル君からは お礼のメールが届き。

【来る時は 先に知らせて下さい!】と言われました。

はい… すみません。


 次の週の 学校の日。

その日は 通常通り登校でき、喫煙所へ行くと。

やはり あの方が、1人で タバコを吸っておられた。

『何で 先週は、電車遅れたんだよぉ』っと、心の中で つぶやきつつ。

この日は 少し早めに着けていたし、2人だけの時間が 何やら重々しくて


つぃ…

『春になったら 卒業されるんですか?』と 声を掛けた。

「いや 俺は、9月に入ったんで まだです」


 ??一瞬 言っている意味が、理解できなかった。

私の通っている 趣味程度のコースの方は、随時入学OKなんだろうけど

毎日通っているコースは、春 入学なんだとばかり思っていたから。

 それより 私は、春 卒業してしまわれる方だとばっか思って

ちょこっと 変な事言ったとしても、後 しばらくしか居られない方なら

別にイイだろうと 思って、結構 思い切って、声をかけたつもり

だったんで、ヤバっ;; まだ来る人なんだと 焦った。


『9月とかも 入学出来るんですか?』

「あぁ 春と秋と、2回あるみたいです」

『そうなんですか…』



 と会話して、続かず。

また 重い空気が流れ…


『あの?お歳は?おいくつなんですか?』

「36です」

『はっ??』

すごい 含み笑いの顔をしながら

「36です」

『えっ?26じゃなくて?』

「はいw」

『え・せいぜい 25・6やと思いました』

「36ですよ」

笑顔な感じが 半端なく、いたずらな顔です。

『そ、そ、そぉなんですかぁ…』と言いながら、何か この人面白いかも

っと思う様になり。

『大阪の方ですか?』

「いえ 〇〇から来てます」

『〇〇からですかぁ 時々ですけど、そっち行きますよ』

「どっから 来てるんですか?」

『□□からです』

「あぁ 昔、行きました」

『ですよね 田舎だから、来ないですよね』


 と、話せた。何か 思ってた感じとは、年齢もそうだし

そんなに 私に対して 怪訝な感じで話してくる感じでもなかったから

調子にのって。


『来週でいいんですけど、もしか良かったら 連絡先教えてもらえます?』と

「別に 今でもいいですよ」

『あ。ごめんなさい、携帯持ってきて無いから 来週しか来ないんで、来週で…』

と 話していると、若者クラスの人が 3人程入ってきたので

そこで、私は 退室しました。



 その翌週。

駅から 学校まで、ちょっと急ぎ足で行って。教室に 荷物を置き

喫煙所へ行ってみた。途中 若者クラスの方を、チラッと 覗くと

2人程居て 朝食を食べてる感じだった。


 喫煙所には 誰も居なかった。  ホッっと思った。


 喫煙所は 建物内の、一角に 無理やり設けられた所で。窓はあるけど

全部合わせても 3畳あるのかな?位の広さ。吸い殻入れは 1つ。

椅子は 多分、元々は 4・5個なのではないかと思う。そこに 教室から

勝手に 持ち込んで増やしてあって、その日 その日で、数が違う様に

思った。

 いつも先に来られ居る方は 一番奥の窓際の席に、座っておられます。

私が 2番目で 入室した時には、すぐ出れる様に、出入り口に近い端の

椅子に座って、一服します。

 吸い殻入れが 1つしか無いので、吸う人ごと 殻入れを、移動したり

譲りあったり、喫煙所で 良く見る光景が、繰り広げられて という

暗黙のルールがある。喫煙者特有の コミュニケーションの場です。


 その時も もう、その席が 私の指定席の様に、端っこの席に座り。

~♪フンふ~んっ♪ 誰も居ないw 気遣う事無く タバコが吸える♪

急いで来た分 落ち着けたい気持ちもあって、ゆっく~り 燻らせる。


 ポスッ パスっ、ポス… パスっ … …っッ


 何か 独特の足音が、廊下の方から 響いてきた。あぁ あの方だ。


 急に ドキドキしてきた。

先週の事 覚えていてくれてるかな?…

 本当は あの時、携帯は持っていたんです。だけど 多分、

操作のどうこうをやっているうちに、他の人達が 来そうなのが

わかったから、『来週』って言ったんです。

 すぐにでも 良い口ぶりだったから、交換してしまいた

かったのになぁ~っと、1週間 悔やんで、暮らしていました。


 若者クラスの方から 出来てきて、喫煙所の方へ来る 足音。

キゃっ 来る! 顔を上げられない。

喫煙所に入る 手前から、「ハざま~す」を 声を掛けてきていて。 

扉の所から、奥へと行くまでの間。

白いスニーカーが ポスっパスッ と音をたてて、通ったんだけど

私の前の 一瞬が止まった様に、見えた。

 多分 止まって無いと思うんです、だけど その1歩の

足の運びは コマ送りのスローモーションで、私には 止まってました。

何か「わかってます」って、そこで 応えられてる感じがしたんです。


 『あ、おはようございます。』

私は 顔を上げれないまま、挨拶を返す。

 その人は いつもの、一番の奥の椅子へ 行きつつ、

早速 煙草を取り出して 火を点けながら

「早いンすね」

『は・はい。今日は 早く着いてしまって』

…って、急いできたんだけどw


 恐らく 実際には、ホんの数十秒とかの時間のはずですけど

沈黙の時間があって。

私には 数分経った感覚があって、早くしないと 

また、皆が来てしまう;; っと焦りがあって。


 やっと 顔を上げて、息を ちょっと深めに吸って。奥の方へ 身体を向けて

『あ、あのぉ 先週…』と 言いながら、携帯を 胸の前に握って。

「あ・ハィw」

「はぃはい…」

っと 咥えタバコにして、煙そうな顔で お尻のポケットから

ゴソゴソ 取り出す仕草。


 携帯を開いて、操作をし 差し出してきて

「はい。」

『いいですかぁ』

もう一度 更に、携帯を差し出す。

『すいません』

と 1つ椅子をずらして、座り 差し出された携帯画面を見る。

「俺 よぉわからんから、そっちでやってくれる?」

『あ じゃぁ お借りします』

と、携帯を受け取り その場で、自分の携帯に 情報を打ち込む。

もうちょっとで 全部打ち込み 終わるところで

いつもの 若者3人程が、ドヤドヤと 入ってきた。


 わっ マズい;;

最後まで 打ち込み、ささっと 携帯を返し。

『連絡させてもらってイイですか?』と 小声で

「あ、はい」

入ってきた連中が 何してんですかぁ的な感じで、寄ってきそう

だったから、慌てて その場を後にしました。

 あの後 何か、突っ込まれてたか どうかは、わかりません。


 教室に戻って、向こうの情報だけもらっただけだったから

それは 失礼だろうと思って、自分の情報を書いて メールした。

授業始まる前だったし、返信は無いだろうと思っていたら、即 レスあり

「〇△□■◇ と言います。」

と 名前が書かれていました。


 もう授業が始まる時だったので 携帯を チラッと見ただけで

すぐ仕舞って、気持ちを 落ち着けて、作業に入りました。


 学校が終わって 帰り、一服しに 喫煙所へ寄りたかったけど

もう 若者クラスが終わって、ガヤガヤしているのが わかったので

そのまま 駅へと向かいました。

 毎日 通うクラスは、午後からも 授業があるので

各々 昼食を学校で食べる様です。


 電車に乗ってから 『今 帰宅中です。また メールしても良いですか』

とメールしました。

 わりと すぐ返信があって

「いつでも どうぞぉ」と。

『学校の事とか 色々教えて頂きたい事があると思うので、よろしくお願いします。』っと 返した。


 それ以降は メールするにも、出来る内容が無かったので 

そのまま 1週間過ぎました。

 その間も モデル君からのメールとかもあったりしていたのでね。


 次の週

その時は 急いで学校へ行く事なく、いつもよりも ちょっと遅れて

喫煙所へ。やはり あの人が、1人で居られました。

『おはようございます』

「おはようございます」

『先週は ありがとうございました』

「いえ」

通常なら もうそろそろ、他の方々も 来られてて良いタイミングです。

なので あんまり話せないだろうと思っていました。

『いつも 早いんですね』

「電車が これしか無いから、あんまり ギリギリなのは、嫌やし」

『そうですよね』

『いつも お帰りは、何時位ですか?』

「あぁ いつも、一緒に帰ってた人が居るんやけど、卒業したから 今は 早い」

『早いって いつ頃ですか?』

「7時位には 帰ってるかな」


 私は わかってなかったんだけど、春 入学して来られた方々は

その段階で 既に、卒業されてた様で。だから 喫煙所へ来る人も

居なくなった様だ。話の中から それを察知して、だと 人が来ないと

安心して。

『お電話とか しても良いですか?』

「あんま 電話好きじゃないけど」

『そうですか… でも 色々お話ししたいので、とりあえず 今夜、電話したいですけど?ダメですか?』

「あ、えぇよ」

『それじゃ 電話する前に、メールしますね』

「ぁ、おん」


 と そこまで会話して、部屋を出た。





 


 


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