参考文献と解説

参考文献と解説

  



             エンドロールに代えて――。



                  *




            ■ 各章エピグラフ引用文献 ■



            【 1.見えないことの日常 】


▼ 三田村鳶魚 江戸の実話 政教社 1936年 363頁

「幽霊があるの無いのといふのが虚偽の行止まりだが、あるとして無い証拠を挙げるのも、無いとしてあるといふ現実を打破するのも全く同じことになる。江戸時代の儒者、医者、坊さまが妖怪研究に、百尺竿頭一歩を進めなかったのは、何故であつたらう。これは今日の明るい東京の人々も考へていゝことのやうだ。」 

             


           【 2.あるかもしれない学校の怪談 】


▼ 柳田国男 著/小松和彦 校注 新訂 妖怪談義(角川ソフィア文庫) 角川書店 2013年 17頁

「無いにもあるにもそんなことはもう問題ではない。我々はオバケはどうでもいるものと思った人が、昔は大いにあり、今でも少しはある理由が、判らないので困っているだけである。」



              【 + 暮樫言鳥の日常 】


▼ 柴田宵曲 編 奇談異聞辞典(ちくま学芸文庫) 筑摩書房 2008年 5頁

「奇談の奇ということも、人により書物によって固より一様ではない。余りに奇に偏し怪に傾けば、久しきに及んで、厭にならぬまでも、単調に陥る虞れがないとも云えない。色彩や香気の類にしろ、刺激の強い中に暫くおれば、無感覚に近くなるようなものである。」



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            ■ 主要参考文献・Webサイト ■


□ 村上健司+スタジオハードMX 編著 百鬼夜行解体新書 光栄 2000年


□ 常光徹 学校の怪談 口承文芸の研究Ⅰ 角川ソフィア文庫 角川書店 2002年


□ 宮田登 妖怪の民俗学 日本の見えない空間 ちくま学芸文庫 筑摩書房 2002年


□ 松谷みよこ 現代民話考 7 学校・笑いと怪談・学童疎開 ちくま文庫 筑摩書房 2003年


□ 一柳廣孝 編著 「学校の怪談」はささやく 青弓社 2005年


□ 東雅夫 編 文豪怪談傑作選 柳田國男集 幽冥談 ちくま文庫 筑摩書房 2007年


□ 京極夏彦 文庫版 妖怪の理 妖怪の檻 角川文庫 2011年


□ 東アジア恠異学会 編 怪異学入門 岩田書店 2012年


□ 柳田国男 著 / 小松和彦 校注 新訂 妖怪談義 角川ソフィア文庫 角川書店 2013年


◇ "国際日本文化研究センター | 怪異・妖怪伝承データベース" http://www.nichibun.ac.jp/youkaidb/


◇ "学校の怪談一覧 - Wikipedia" https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E3%81%AE%E6%80%AA%E8%AB%87%E4%B8%80%E8%A6%A7




                  *




                  ■ 解説 ■


タイトルに「怪異」を掲げておきながら具体的な怪異らしい怪異がほとんど姿を見せることがない本作品ですが、ここでは、上記参考文献一覧をもとに作品内で元ネタが明確なものをいくつかセルフ解説してみたいと思います。



            【 1.見えないことの日常 】


まず、1章2節で言鳥が語っている或人幼少時の失踪エピソード。

これは柳田国男少年時代の幻覚と失踪の体験談から複合的に想像を膨らませて創作しました(参考文献リストでは、東雅夫 編『文豪怪談傑作選 柳田國男集 幽冥談』収録の「幻覚の実験」「故郷七十年」に該当)。


特に、失踪直前の或人(6)が「あ。お星さまたくさん、きれい」と言い残していなくなったのは、柳田国男「幻覚の実験」にある、「今でも鮮やかに覚えているが、実に澄みきった青空であって、日輪のありどころよりは十五度も離れたところに、点々に数十の昼の星を見たのである」という箇所から発想を得ています。



           【 2.あるかもしれない学校の怪談 】


2章「プロローグ」冒頭以下のくだりは柳田国男『妖怪談義』の冒頭部分をパロディ的にアレンジしたものです。


たとえば――、


・本文

「妹の話をひとつ、できるだけ真面目に、また存分にしてみたい。はたして僕の十七年足らずの人生のうち、~~」


 ↓


・妖怪談義

「化け物の話を一つ、出来るだけきまじめにまた存分にしてみたい。けだし我々の文化閲歴のうちで、~~」


――のような感じです。


2章「屋上の幽霊」において、或人が「何を怪異ととらえるか」ということについて、布津と五筒井さんを相手に自説を開陳するシーンがありますが、これについては『怪異学入門』を参考に、東アジア恠異学会が提唱するところの「恠異学」の知見からインスピレーションを得て、それらしく理屈をこねくり回しました。


同じくだりで世間的な妖怪への関心の高まりを年別に分析する箇所がありますが、その辺りの年代考証は『百鬼夜行解体新書』と『妖怪の理 妖怪の檻』の両書巻末の年表を主に利用させていただきました(……が、これは当初思っていたよりもネタを盛り込めなかったですね、無念)。


2章各節表題にもなっている〝学校の怪談〟の数々は、松谷みよこ『現代民話考 7』と常光徹『学校の怪談』にある話を参照した面が大きいです。また、国際日本文化研究センターの『怪異・妖怪伝承データベース』も大いに活用させていただきました。


中でも、「トイレの花子さん」については、『現代民話考 7』、『学校の怪談』に加え、一柳廣孝 編著『「学校の怪談」はささやく』収録の戸塚ひろみ「「花子さん」と呼ぶとき──学校とリテラシーの近代から」の記述を参考に独自の解釈をし、キャラクター化しました。


2章「エピローグ」の「呼び名の怪異」のエピソードは『妖怪談義』にずばり「呼名の怪」という段があり、そこから発想を得ました。例のお札の呪文もこの中で言及されているものです。



               【 + 暮樫言鳥の日常 】


「+ 暮樫言鳥の日常」にはあまり捻ったネタはありませんが、言鳥が怪異スポット巡りをする際にどういう場所にどんな怪異があるかというところでは、宮田登『妖怪の民俗学』の「妖怪のトポロジー」の章を参考にしました。





       他にも多くの書籍やウェブサイト等を適宜参考にしました。

           この場を借りて感謝申し上げます。







                      〈『暮樫或人の怪異非存在』、了〉








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