4.
曰く、イベント当日は生徒会と一部部活動だけでなく、各委員会や教職員、そのほか有志による出し物がメインとなり、加えて一年生自らも参加できる仕掛け(どうやらスタンプラリー的な何からしい)も準備されているとのことで、新歓としてはかつてない大掛かりなものになる――と、そういう宣伝であった。
今年の新入生歓迎会は今までとは一味違う。そういう強い意気込みが、主催者側から感じられた。
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「ここまで持ってくるのはなかなか……ええ、なかなか大変でした」
針見先輩はしみじみと呟いた。
「ああ、そういえば、
「ええ、特に各委員会の方々には格別のご尽力を頂きまして……。委員長さんたちを始めとした委員のみなさんが率先して動いてくださったことは、イベント全体の大きな推進力になりました」
幾ら感謝してもし足りるということはありません、と先輩は言った。心の底から嬉しそうな表情をする先輩を見ていると、こちらまで何か喜ばしい気分になってくる。むしろ学校行事に何も貢献していない自分が申し訳なく思えてくるようで、僕は内心なんともむず痒かった。
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現実的な話をすれば、幾ら同じ学校の生徒とは言え、不特定多数のアクティブな参加を促すのは容易なことではない。たいていの大衆は上からの声には無関心である。それをここ二、三か月で(しかも年度を跨いで)実行したのであるから、今期の生徒会の――延いては、針見りよん生徒会長の手腕は確かなのだろう。
それに今回のイベントに限らず、針見先輩の生徒会運営能力は堅実で信頼できるというのが校内世評の多勢で、それこそ衆目を引くような派手さはないものの、事務処理や対外交渉能力では他の現職役員の誰にも引けを取らない――そのように聞き及んでいた。
どんな時でも穏やかな相貌を崩さず、冷静沈着。
慌てることなく状況に取り組む。
その姿勢こそが、彼女が支持を集めている理由の一つでもあった。
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「お話を伺っている感じだと、その、とても順調なスケジュールだという感じを受けるのですが……」
僕が敢えてアドバイスするようなことが何かあるとは思えなかった。休み返上で活動に協力していた五筒井さんたち図書委員のように、現場に詳しい訳でもないし……。
僕が困惑の色を示していると――、
「そりゃあ
と、意外にもフォローは僕の隣から入った。
「えっ? なんだい
しかし布津は僕のほうを見ることなく、
「はあ……。このタイミングでこいつに相談ってことは、例の〝学校の怪談〟騒動にかかわってのことでしょう、針見会長」
「ええ、そうです。その通りですね」
針見先輩はにこやかに応じた。彼女の穏やかな顔は変わらず、あまり困っているふうには見えなかった。
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