舞い降りた翼竜
「待って」
ブラッドの声に全員が立ち止まった。ブラッドは前方を指差した。
「何か来る」
勇者が前方を見ると、大きな翼を持った何かがこちらに向かっているのが見えた。
「翼竜だ」
昔はよく空を飛んでいる姿が各地で見られた。温厚な性格が多く、こちらから刺激しない限り襲われるのとはないと勇者は父親から教わっていた。
「普通にモンスター出てきたの初めてだな」
ハヤブサはそう行って身構えた。
「炎を放ってきます!」
リリーは声をあげると勇者たちの前に水の壁を作り出した。
翼竜は口から大きな火の玉を吐いた。ゴオっという音が空気を切りながら火の玉は勇者達に飛んできている。翼竜はまだ手のひらほどのサイズにしか見えず、距離は遠かった。
「来ます!」
炎の玉が水の壁に直撃する。爆発が起き、煙が上がった。勇者達は爆風に抵抗しながら翼竜を睨む。遠くにいた翼竜は気が付けば目の前にいた。
「ずいぶんなご挨拶だな」
勇者が声を掛けると、翼竜は咆哮する。
「威勢がいいのは良いが、相手を選ぶんだったな」
勇者は息を吐いてブラッドを指差した。指を差された彼女は久々のモンスターに興奮しているようだった。
「この山、すぐ下れそうね」
悪魔が笑ったような顔をして、ブラッドは翼竜に飛び掛った。翼竜の目の前に飛んだブラッドは、そのまま右脚の踵を思い切り振り上げ、翼竜の頭に叩き込んだ。翼竜は体勢を崩すが落下はせず、尻尾を振り回しブラッドを牽制する。ブラッドはその尻尾を掴み、翼竜を勢い良く地面に叩きつけた。
「バケモンだよ、やっぱ」
ハヤブサが苦笑いしていた。勇者も同じ顔をしている。
「ビーストテイマーって、懐かせるとかじゃないの? 完全なる恐怖による支配だったの? どうなの、鳥使い」
「いやまあ、自分の方が強いってことを示してるんだろうけどさ……」
ハヤブサは唸った。目の前では翼竜のマウントを取ったブラッドが拳の雨を降らせている。
「翼竜に馬乗りって、状況がもう意味不明だよな」
「ブラッドさん! 強い! かっこいい!」
引き気味の男性陣をよそに、リリーは目を輝かせていた。
「ブラッドかっこいいー!」
勇者は深く考えることを放棄してブラッドに声援を送った。
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