勇者の仲間

「なあ、ブラちゃん、勇者の仲間はどんな奴がいたんだ?」

 勇者はブラッドの横に並び声をかけた。こちらは魔法使いが加わり、いよいよ役者が揃ったわけだが、前勇者はどうだったのだろうか。ハヤブサの言うドラゴンという魔法使い以外は知らなかった。

「魔法使いのドラゴン。弓の使い手のナイト。ビーストテイマーの私。あとは僧侶のシンがいたわ」

「ナイトとシンっていうのも、ブラちゃんくらい強いのか」

「戦闘面で言えばナイトはかなり強いわ。エルフなのよ、彼。魔法も強いし、弓は外さないし、何より頭が良いわ。後方支援に特化した参謀役ってところかしら」

 ブラッドは懐かしむように言った。

「シンって言うのは金のことしか考えてない僧侶なんだけど、道具の扱いや心理戦に長けていてね。彼にかかればどんな罠、どんな脅しも無意味だったわ」

「バランスの良いメンバーだな」

 ハヤブサが感心したような声を出す。嫌味ではなく、素直にそう感じたらしい。

「俺たちだってバランスの良いメンバーだよ」

 勇者が言うとハヤブサは首を傾げた。

「どのあたりが?」

「みんな付き合いやすい」

「そこ?」

 ハヤブサは半笑いだったが、勇者は力強く頷いた。勇者は付き合いやすさが長旅でもっとも必要なものだと考えている。力や技術などは経験さえ積めば(モンスターの居ないこの現状ではどうにもならないが)、どうにかなるものだ。ブラッドのことを挙げるわけではないが、仲間割れなどはしたくはない。

「わかる。大事よね、付き合いやすさ」

 ブラッドは大きく首を縦に振った。勇者は言葉を選び間違えたと謝ろうとするがブラッドはただ制止した。

「皆さんと打ち解けられるように頑張ります……!」

 リリーは大きな声を出した。そんなリリーにハヤブサは優しく声を掛けた。

「大丈夫大丈夫。どうにかなるよ、リリーちゃん。俺もブラッドも気づいたら勇者の仲間だったし。変に身構える必要はないない」

「はい! ピィちゃんさん!」

「待って?」

 勇者がハヤブサとリリーの微笑ましいやりとりを眺めていると、ブラッドと目が合った。ブラッドはリリーを一瞥して微笑んだ。

「大丈夫よ。あの子は自分で選んできたんだから」

 勇者は頷き、「ピィちゃんじゃないからね?」と必死に繰り返すハヤブサの肩を叩いて先へ進んだ。

「いや、だからね? 聞いてる? ピィちゃんじゃねぇよ!」

 勇者は道の先を見つめる。岩山はまだ先まで続いていた。


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