二度目の試練
魔術師たちは真の資格を得るために、洞窟に入る。
そこでは大きな力を持つ精霊たちに力量を問われる。
力なき者は魔術師にあらず。精霊たちの加護を得た者のみが魔術師として認められる。
しかし、気をつけなければならない。
精霊たちの中には危険なほどに強大な力を持つものもいる。強さに目を眩ませれば、大きな対価を取られることになるだろう。
「勇者様、どうかお気をつけて」
試練の洞窟まで見送りにきた女王は、勇者の手を撫でながら言った。
「ありがとうございます」
女王はええ、と頷くと、リリーに視線を向けた。
「リリー。大丈夫。貴女ならきっとやり直すことができる」
「が、頑張ります!」
力の入るリリーを見て、勇者は彼女の肩を軽く叩いた。リリーは少し表情を和らげて頷いた。
「勇者様、一つだけ」
女王は勇者の手を強く握った。
「精霊の中には、私たちでさえ扱えなものもおります。余程のことがなければ干渉はして来ないとは思いますが、お気を付けて」
「女王でさえも?」
「ええ、ええ。神に近い精霊などは、制御できるものではありません。しかし、我々は共存する身、悪戯に手を出さなければ心配はいりません」
「わかりました、ありがとうございます」
洞窟の前に着くと、ハヤブサとブラッドが難色を示し始めた。洞窟は前回のものよりも暗く、狭かった。正直、勇者自身も洞窟を見た瞬間にハヤブサは無理だと思った。
「結構入り口狭いじゃねぇかよ……中もそこまで明るくないし……」
「やっぱり私、力になれないと思う……」
勇者は舌打ちを鳴らした。ようやく冒険らしくなってきたが、冒険に不向きな仲間ばかりだった。
「リリーちゃんの為だと思って頑張れないのか」
「そうは言っても……」
ハヤブサは顔中に脂汗を浮かべながら頬を痙攣させていた。
「精霊の洞窟は通れただろ」
「広さと明るさが違う。あっちは建物の中って感じだったけど、こっちは洞窟だよ」
「洞窟だからな」
「わかったわ。勇者が帰ってくるまで、私は命をかけてピィちゃんを守る」
ブラッドは胸を張った。
「自然に離脱するんじゃない」
「ピィちゃんが暗闇と狭いところが駄目なように、私は実体のない相手が無理なの」
「安心してくれ。威力は落ちるが、実体のない敵も攻撃できる小手を買っておいた」
勇者が装備を取り出すが、ブラッドの表情は晴れない。
「ごめんなさい、その、相性というか、存在が無理なの」
「怖いだけか」
「……」
ブラッドは真顔で頷いた。人体を素手でバラバラにできそうな戦士でも霊の類は怖いらしい。
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