妹の思い
「大丈夫なのか? 無理をしてついてきてくれなくても」
話を聞いた勇者は言った。立ち直るには、時間が必要な時もある。
「いえ。お姉ちゃんにいつまでも心配させるわけにはいきませんから」
リリーは悲しげに微笑んだ。
「お姉ちゃん、私が洞窟で闘ってる時に助けに来れなかったことを今でも悔やんでるんです。片目を失ったのは自分のせいだって……。お姉ちゃんは他の用事で近くにはいなくて、戻ってきた時には勇者様に止められて待たされていたみたいなんです」
リリーの体に力が入るのが、見て感じ取れた。
「だから、もう、大丈夫だよって言うのを見せてあげたいんです。それに、勝手に盗み見ていただけですけど、元気をもらった勇者様たちの力になりたい」
「わかった。協力してくれてありがとう。心強いよ」
勇者は改めて手を差し出した。リリーはしっかりと手を握った。
「私の目の傷を見た時、皆さん、驚きはしましたけど、誰も憐れんだり怖がったりしませんでした。すごく嬉しかった」
「わかるのか?」
「魔力のせいか、この性格のせいかはわかりませんけど、少しだけ相手の気持ちを感じ取れるんです。だから、お姉ちゃんといると、悲しい気持が伝わってきて……」
リリーは俯いた。姉を思う妹の気持ちは、姉が思っている以上に強そうだった。これを知れば、フィーも少しは安心するだろう。しかし、それを告げるのはリリー自身でなければならない。
「明日にはお姉ちゃんに安心してもらえるさ」
勇者が笑いかけると、リリーは微笑んだ。
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