見習い魔法使い
「到着したよ!」
半魚人の指差す先には人が通れるほどの穴が空いている大きな結晶石がある。
「アタシの家!」
半魚人の言葉に三人は黙った。勇者は舌打ちを鳴らしている。
「紹介するのはアタシの妹なの! まだ見習いだけど、すっごい魔法使いなのよ!」
「妹はどんな子なんだ?」
ハヤブサがたずねると、半魚人は胸を張った。
「すごい子なの! 性格は私とは真逆だけどね!」
「話を聞いてみよう」
勇者は結晶石の中に歩いて行く。半魚人は早足で勇者を追い抜いた。
外から見れば透明の結晶石だったが、中は真っ白な壁になっていた。四人が入ると小さな影が部屋の隅へ移動した。
「お姉ちゃんだよー!」
半魚人は影が逃げ込んだ隅へ走り寄った。影は俊敏な動きで逃げて行く。
「逃げられてるよ、お姉ちゃん」
「鬼ごっこなの! かわぁいいなぁ!」
半魚人が逃げる妹を確保する。
「この方たちは二代目勇者様なのよ! さあ、ご挨拶しなさい」
真っ黒なローブに身を包んだ妹は小柄だったが、体を縮こまらせさらに小さく見えた。
「……どぅも」
「紹介す……あ、自己紹介します! アタシは フィー!」
「おねーちゃんが自己紹介するのっ?」
妹は声を荒げた。三人はそれを眺めながら、そういえば名前を聞かなかったなと考えていた。
「この子はリリー! 前勇者様が来た時の、試練を受けた魔術師の一人。しかも、実力は一番だったのよ」
「……どぅも」
「俺は勇者だ。こっちはブラちゃんとピィちゃん」
「おい」
ブラッドはニコニコ手を振っていたが、フィーに声をかけた。
「まだ見習いなの?」
「実はね。あの時の試練でリリーは怖くなってしまって試練に行けなくなってしまっているの。けど、大丈夫! 実力は女王様も認めるくらいだし、勇者様が付いていればきっと試練を乗り越えられる!」
フィーは胸を張って言った。
「つまり、リリーちゃんの試練に付き合って欲しいってことね」
ブラッドが言うと、フィーは「まあまあ」と頭を掻いた。
「お互いにとって良いことじゃない!」
「どうする、勇者」
ハヤブサが困ったように呟いた。
「お願いしよう、他に探すのも大変だろうから」
勇者はそう言って姉妹に近づくと、手を伸ばした。
「力を貸して欲しい、いいかな」
「……わかりました」
リリーはローブのフードを外して手を伸ばした。怯えたように瞬きを繰り返す彼女の右目、は火傷の痕とともに真っ白になっていた。
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