勇者の誇り
「行きましょう」
ブラッドは両手を上げて伸びをすると歩き出した。その様子を二人は眺めていた。
「俺は自信というか、勇者としての誇りを見失いそうだ」
勇者はぼハヤブサにぼそりと呟いた。盗賊の矢を防ぐことか精一杯の自分と、空中を舞い敵を片付けるブラッド。勇者交代したほうが早いんじゃないかと正直思う。
「俺もこの先レーダーとして生きていきそう」
「あ、ずるい。俺は何もないんだぞ」
「何を言ってるのよ。最後に魔王を倒すのは貴方なんだから胸張って」
「俺が魔王と戦える頃には、ブラちゃんが一発殴れば魔王死ぬと思うんだ」
いや、場合によっては睨みつけるだけでいいかもしれない。
「それはないわ。魔王を倒せるのは勇者だけよ」
ブラッドは笑う。
「魔王の肉体は邪気とか、そういう悪いものの集合体みたいなものなの。そこにはどんな攻撃も届かない。なぜなら、人間誰だって負の感情があるのだから。でも、勇者は違う。人々の希望を背負ってる」
「話が急に壮大になってきたな」
ハヤブサが鼻で笑う。
「魔王がこの世の負を取り込む器なら、勇者はその逆ってこと。だから、町から町へ移動して人々の希望を受け取るのが大きな意味を持つのよ」
ブラッドは笑っていたが、冗談を言っている様子はなかった。
「さすが前の勇者の仲間だ。最終戦の前に聞きそうな説明だな」
「わかっちゃった? 旅の途中で教えてもらったの」
ブラッドはふふふと笑った。前勇者は、どれだけの希望を背負って旅を続けていたのだろうか。
「さあ、もう少しで精霊の洞窟よ。あそこに見えるのがそう」
ブラッドが指差す先には、青白く光る洞穴が見えた。
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