はじめての城下町 

 草原を抜けると大きな石造りの橋が姿を見せる。橋の先には鎧を着た兵士たちが巨大な扉の前に構えている。扉を抜けると、石や煉瓦の建物が並ぶ光景や異国の服を纏った旅人たちが目に飛び込んだ。


 他にモンスターは見つからず、暗雲からかすかに見える夕暮れには到着することができた。大きな石造りの橋を越えると兵士二人が街の入口を塞いでいた。

「二人目の勇者だ。国王に会いに来た」

 勇者は、村で隊長に渡された金貨の袋を見せた。袋には国の印が刻まれている。

「よく来たな」

 兵士二人は笑顔を見せ、扉を開いた。

「城はこのまま真っ直ぐだ」

「ありがとう」

 町は、地面までもが石造りで緑がなかった。自然に囲まれた生活をしていたハヤブサはそわそわしてしまう。

「ここが国王のいる町か、すげぇな、おい!」

 ハヤブサは辺りを見回しながら騒いだ。

「先に挨拶しに行く、観光は後だ」

「わかってんよ。けど、な、すげぇ」

 ハヤブサは辺りを見回しながら勇者の後を歩いた。

「おい、見ろよ勇者! あの店カッコイイ鎧があるぞ!」

 ハヤブサは目を輝かせた。

「走り回るお前が鎧? ガシャガシャうるさいだけだろ」

 ハヤブサは目を伏せた。

「あ、なあなあ、勇者! あそこに占いの館があるぞ! すげーな、次に行くべきところを占ってくれんだって!」

 ハヤブサは勇者の裾を思い切り引っ張った。

「俺たちが次に行くところは目の前だから」

 ハヤブサは静かに裾を離した。

 勇者は町に興味を示さずに歩いていく。

「お前さ、勇者だから国王のところに行くのはわかるよ。けどよ、俺ら旅人だぜ? 新しい場所に来たら騒ぐだろ? なぁ、勇者」

 ハヤブサは不貞腐れた様子で呟いた。すると、勇者は息を吐いた。

「父親の手伝いでこういう所には来たことがあるんだ」

「うわあ。俺だけ田舎者扱いかよ、勇者のくせに好奇心とかないのか?」

「子供か! 後で見るって言ってるだろ!」

 勇者は舌打ちを鳴らし、早足で城に向かった。

 町には人が多く、閑散とした草原より歩くことに時間がかかった。歩きながら耳に入った話では、モンスターが居なくなり、遠くの国の商人たちや芸者たちがやってくるようになったという。勇者は村の少女がこの町の生まれだったことを思い出しながら歩いていた。ハヤブサは「おー」と店を通るたびにリアクションを起こしながら続いている。

 町の中心に着くと、大きな城が顔を見せた。この区画まで来ると、住民の姿はなく、兵士が巡回していた。

「お待ちしていました、勇者様」

 城から一人の老人が歩いてきた。王の側近だという。

「よくわかったな」

「使いの鳥から」

 側近は頭を下げると勇者を城の中に入れた。

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