宝箱の中身3
ハヤブサと男は勇者に近寄った。勇者は二人に作戦を告げると、骸骨に斬りかかった。ハヤブサは衝撃で飛ばされたダガーを拾いに走る。
骸骨は勇者の剣を掴むと、剣ごと勇者を持ち上げた。勇者は持ち上げられた剣にぶら下がるように掴まった。
ハヤブサはダガーを拾うと、骸骨の足を狙い何度も切り抜ける。腕のように上手くはいかず、骸骨が膝をつくことはなかった。
勇者はぶら下がったまま短銃を取り出すと、骸骨の腕に向かって発射した。弾は二発で切れてしまったが、腕は落ちた。勇者は落下すると、剣を拾い、ハヤブサが狙った足を切りつける。そこへハヤブサも攻撃を仕掛け、足を一つ落とすことに成功する。
「無駄だ、元に戻る」
体勢を崩された骸骨は怪しげに笑い続けていた。勇者とハヤブサは飛び退き、距離を取った。
「うおおおおおおおおおお!」
武器屋の男が大声を上げながら骸骨に突進する。男は骸骨を抱え上げると、そのまま投げ飛ばした。投げ飛ばした先には宝箱がある。
宝箱の手前に落ちた骸骨を、勇者とハヤブサは二人掛かりで宝箱に押し込む。すると、骸骨は「ひひひひ」と笑った。
「お前らも逃げるのか。前のやつらのように」
「違う。お前の棺桶を先に用意したんだ」
勇者は爆弾に火をつけると宝箱の中に落とし、蓋を閉めた。
ゴスッ! と、宝箱から遠くで爆発するような音が聞こえる。蓋は吹き飛ばず、煙も漏れ出さなかった。
しばらくの沈黙ののち、切り落とした骸骨の骨が粉になっていくのを確認した。
「……勝った」
勇者は呟いてその場に倒れた。勇者が見回すと、ハヤブサも座り込み、男も寝転んでいた。
「たしかに……ハヤブサ、強かったな」
勇者は半笑いで声をかけた。
「だろ……」
ハヤブサはへへ、と笑っていた。
「ところで、なんでその武器屋のオヤジがいるんだ。それに、自分で蒔いた種って?」
ハヤブサが言うと、武器屋の男は体を起こした。
「それは……」
「そいつが宝箱開けてこうなったんだよ。それだけだ」
勇者は男の言葉を遮るように言った。
「あんた……」
「武器が売れないなら、他のことを考えないとな。家族がいるんだからさ」
「けど、武器商人の俺はどうしたら……」
「トーストでも焼いてみろ」
勇者は息を吐き立ち上がり、出口へ向かった。
「なあ、勇者」
ハヤブサは神妙な顔つきで声をかけた。勇者はハヤブサを見る。なんだかんだいって助けられたのは事実だ。ハヤブサが居なければここで死んでいたかもしれない。こちらの作戦にも悩むこともなく乗ってくれた。案外、相性は良いのかもしれない。
「なんだ?」
「ここを出るまで間、手を繋いでいて欲しい。通路は狭くて暗いんだ」
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