第97話「ウナギのさばき」

「いらっしゃい、いらっしゃい~!」


と、威勢の良い声が響く中、市場の入口で、魚屋のオジサンが、どんどんウナギをさばいていた。僕は婆ちゃんが、店内を見て帰ってくるまでの間、小一時間、ウナギのさばきを見ていたのだった。

小学校1年生の時の話だ。

オジサンは、水槽からウナギを捕まえて、板に置くいた。


ガツン!!


目打ちで頭を刺す。一発だ!ウナギは、板の上で暴れていた。

そうそう、オジサンは板の同じ所を刺していたので、板には穴が貫通していた。


サッ!サクサク


包丁を入れ背骨をとる。

包丁は背中だったかな?お腹だったか?確か、背中だった気がする。


ペラッ!


ウナギは、あっと言う間にさばかれた。


グサッ!


さばかれたウナギは串に刺され、あとは「焼けば蒲焼き」という状態になった。

オジサンは、この一連の動きを4、5分で行なっていたと思う。たがら僕は、婆ちゃんを待つ間に10回以上は見ていたのだろう。あのリズム感のある動き!は、今でも脳裏に焼き付いている。 なぜなら、さっきまで、かたわらの水槽で泳いでいたウナギが、あっという間に串を刺されて、蒲焼の姿になっていくのに、なんともいえない気持ちになったからだった。


余談。

ウナギのさばき方は、東京と大阪で違っている。関東は、切腹から、縁起をかついで背中からさばいたのだ。というわけで、やっぱり背中に包丁でした。


おしまい

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