第95話「水風船」

公園で友達のキッキンが、水道でなにやらやっていた。


「うわっ!割れちまったよ!」


 と、言ってズボンのポケットから、なにやら出してきた。それは、水風船だった。僕の小学時代の話だ。

 

キッキンは、ポケットから出した、水風船を、水道の蛇口に押し当てた。水風船に水が入ると、ぷぅ~と、ティアドロップ形に膨らんだ。夏みかんくらいになった所で、キッキンは、水風船の口を結んだ。


 僕も早速、駄菓子に向かった。蛇口に、水風船を押し当て、水を出す。水風船の中に、水が入ると、だんだんと膨らんだ。膨らむと、水風船の表面が薄くなり、透けだし、中の水が、渦を巻いているのが見えた。口を結んび、手のひらに水風船を乗せると、ひんやりとしていて柔らかく、ぷるぷるしていた。太陽にかざすと……


「うわ~!」


 光りが屈折して綺麗だった。水風船を作っていると、すぐに破裂する水風船があった。あと水風船合戦をした時、ナカナカ割れないのもあった。あれはなんでなんだろう?


 僕は、買ってきた水風船を、ビニル袋から出した。キッキンのように、ズボンのポッケから出したいからだ。その姿がなんか、格好良かったからだ!

わざわざ、ポケットに入れて、水風船を出す。その怪しい姿に酔っていると……


「ミズキ、ミズキ!落ちてる、落ちてる!!」


 と、言われた。足下を見ると、ポロンポロンと、落ちた水風船が散らばっていたのだった。小学二年の時の話だ。


おしまい



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