第94話「宿直の先生」

現在学校では、先生の宿直制は無くなって、専門の警備員を(僕もバイトでやった事がある)置くようになったが、昔は学校の先生が、順番に学校に泊まりこんでいた。

 僕の小学時代の話だ。


◇◇◇


 宿直の先生は、どこに泊まるかと言うと、用務員室の奥には、和室があって、そこで寝泊まりするのだ。学校に泊まる事を考えると、なんかちょっと、ワクワクしてしまう。

 先生によっては、こっそりお酒を持って来て、飲んでいたり(だって、ちゃぶ台に一升瓶おいてあるし、次の日明らかに、二日酔いなんだもん!)夕ご飯と夜食と朝ご飯にと、カップラーメンを買い込んでいたりした。

 宿直になった先生と、よく話した話題がある。夜の学校の事……つまり、幽霊の話だ!


「ねえ、先生!夜の学校てどんなの?」


 と、恐る恐る聞くと……ここからは先生によって、返事が面白くて……


「幽霊がさあ、夜中に歩くんだよ!」


「えっ!聞きたいの?聞かない方がいいよお~!」


「みんなの居る教室にさあ……」


と、期待通りに返事をしてくれる先生もいるが。


「夜?暗いだけだよ。あとは昼間と同じ!」


「寝ちゃうから分からないなあ」


 という返事もあった。

そうそう怪談ネタでは、必ず……


「音楽室から、ピアノの音が……」


「理科室の人体模型や骸骨が歩いて……」


「夜中に、宿直室のドアを、誰かが叩くんだよ……」


 と、みんな口をそろえて、言うから面白かった。

 そのうち……


「その話は、〇〇先生から聞いたよ!」


と、××先生に言うと……


「実は続きがあって……」


と、その先生は言った。なので、その話をまた〇〇先生に言うと……


「あんなに言っちゃダメっていったのに××先生は!……いいかい、本当に内緒にしないと、どうなっても知らないよ~!」


 と、言われ本当にドキドキしたものだった。


◇◇◇


 今にして思えば、先生同士、実際には互いに、いがみあっていた(〇〇先生と他の先生!)のだが、、こういった子どもとの会話では、一致して同じ話をして、相手をしてくれた事をとても嬉しく思う。

 きっと、自分たちが、かつては子どもであった事、本当の気持ちを失わずに生きていたからなのだろうと、今にして思うのだった。


おしまい

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