第44話「九尾の狐」

小学時代、僕は個人経営の学習塾に通っていた。塾では那須に別荘を持っていて、夏休みや冬休みなど、長期休みの時に、子ども達を勉強合宿と称して連れて行ってくれていた。まあ、実際には少し宿題をやるだけで、あとは自然の中で遊んだものだ。


夜になると、お婆ちゃん先生の怪談話が楽しみだった。色んな怖い話しの中に、この地方の妖怪の話しになった。


「この辺りには、九尾の狐ってのがいてねえ」


「九尾の狐?」


「尻尾が九本ある狐なんだよ」


と、九尾の狐の話しが始まった。その話はこんな感じだった……


その昔、九尾の狐は中国から来た妖怪で、日本にて玉藻前(たまもまえ)という絶世の美女に化けていた。玉藻前は時の帝(鳥羽上皇)に寵愛され、契りを結ぶことになった。


しかしその後、鳥羽上皇が病に倒れ、その原因が玉藻前であることが発覚すると、玉藻前は九尾の狐の姿で宮中から逃げ出した。数年後、九尾の狐は下野国・那須に現れる。


女子供、旅人を誘拐し喰い殺すなど暴れ回っていたため、鳥羽上皇は九尾の狐の討伐を命令した。

九尾の狐討伐に、那須に8万の軍勢が押し寄せた。


弓矢によって討ち取られた九尾の狐。しかし、その怨念は凄まじく、狐の尾だけが、大きな石と化した。そして、なんと毒ガスを吐き出し、近寄るものを皆殺しにしたという。


石の周りは生き物が近づけないことからその石は「殺生石」と呼ばれるようになったのだった。

こんな内容だったかな?お婆ちゃん先生が話してくれたのは。殺生石とは火山ガスの事だろうと、連れて行ってくれたお爺ちゃん先生が教えてくれた。


ふと思い出して思うのは、お婆ちゃん先生の語りの上手さだろう。見てきたかのように話すものだから、本当に怖かったのを覚えている。


おしまい

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