第38話「早く、芽をだせ!」

夕飯を買いにスーパーに行った。入り口を入ってすぐの所に、果物コーナーがあり、サクランボが売っていた。その瞬間、僕の小学時代の記憶の扉が開くのだった。


◇◇◇


小学時代、僕はサクランボが大好物だった。だからこの時期になると……


「ミズキ、買って来たよ~」


と、婆ちゃんは、しょっちゅう市場でサクランボを買って来たのだった。お風呂上りにサクランボを食べる。ぺろりとたいらげた。器に残ったサクランボの種を見て、ふと思った!


『これを埋めれば、またサクランボが食べられるんじゃない!?』


という訳で次の日、婆ちゃんに植木鉢を一つもらい、サクランボの種を埋めた。また、食べられますようにと水をやった。婆ちゃんは僕の姿を見て……


「芽が出るといいねえ」


と、言っていた。

そうそう、書いていて思い出した。植木鉢に埋めたのはサクランボだけではなかった。僕はメロンも大好物だった。だからメロンの種も埋めた。たくさん、甘いメロンが食べられるようにと。


この他にも、みかんも埋めた。みかんは種がなかったから、めずらしくあった種を一粒、大事に植木鉢に埋めたのだった。


毎日毎日、僕は水をやった。だけど、もちろんの事だけど……どの種も、芽を出すことはなかった。その姿を見る度、婆ちゃんは……


「買ってきた果物の種からは、実がなんないんだよ」


と、言っていた。僕はそういうものか!と思っていた。

そういえば……バナナも埋めようとた思った。ところでバナナの種はどこだろう?


「婆ちゃん、バナナの種はどこ?」


と、婆ちゃんに聞くと……


「さあねえ、バナナは種がないから、そのまま埋めるのかしら?」


と、言っていた。バナナをそのまま埋めるのかあ!と思ったものの。


『さすがにそれはもったいないだろ~!』


と、僕は思いバナナを埋めるのはやめたのだった。


おしまい

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