第14話「名前入り鉛筆」

僕の職場では、ボールペンで書く事が多いのだが、それと同じぐらいに鉛筆も使って記入することが多い。鉛筆は書いていると先が丸くなってしまうので、時々、鉛筆削りで削るのだが、そんな時、ふと小学時代の事を思い出すのだった。


◇◇◇


入学記念に、婆ちゃんに作ってもらったものがある。それは名前入りの鉛筆だった。一本一本に僕の名前が掘ってあり、しかも……なんと、名前が金色で掘ってあったのだ!

市場の入学祝いのコーナーで、婆ちゃんが頼んでくれたのだ。出来上がった鉛筆は1ダースあり、紙の箱に入っていた。

鉛筆には、神々しく輝く僕の名前。今まで家にあった古い鉛筆が、さらに古代の物に見えるほどだった。

 さてさて実際に使ってみようと思い、電動鉛筆削りで削ったのだが……もったいなくてケースにしまったまま、机の引き出しに大事に大事にしまったのだった。

 そうそう学校では、なんと友だちのイケが同じのを使っていたなあ!


「ミズキも、同じの持ってんだ!?」


 と、盛り上がり一度だけ学校へ持っていって、学校の友達たちに見せた記憶がある。その後、あまりに大事にしすぎて、その存在も忘れたまま時は過ぎた。

大人になり、爺ちゃんが死んだ時に実家に帰ったときに思い出して、机の中を見たけれど、筆の姿はなかった。捨てた訳でもないのだが、どこに消えてしまったのだろうか?


ちょっと寂しい思い出だ。


おしまい



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る