第13話「富士山」

「ミズキ!富士山、見えるぜっ!!」


保育園からの友達のカミが言った。僕の小学時代の話だ。

5年生の時の話だ。僕らは5年生になり屋上で、堂々と遊べるようになった!(一応、住み分けがあって、1・2年は校庭。3・4年は中屋上と体育館。5・6年は屋上だった)


「えっ!本当?」


屋上の隅に行くと、遠くに富士山が見えたのだった。僕らは、フェンスに貼り付き、富士山を見つめていた。


「富士山って、元々は不死の山って言われてたんだぜ!」


と、イケが間に入って来た。

不死の山かあ!……なんだ、それ???な顔を僕がしていると。


「不老不死をあの山に願ったんだよ!不死の山、不死山。それが富士山になった語源だよ」


と、イケは言っていた。

カミとは保育園の頃から砂場で、しょちゅう富士山を作った仲間だったから、富士山の見える屋上は嬉しかった。(高層ビルやマンションに囲まれていたので、低中学年では、デパートの屋上にでも行かなくては、富士山はナカナカ見えなかった)

屋上から、見える富士山。見えると言っても本当に小さくだった。家に帰ってから親父に小学校から富士山が見えた話しをした。


「ああ、見えたか!昔はこの辺は畑ばかりだったから、もっと良く見えたよ。空気も綺麗だったしなっ!」


と、親父は懐かしそうに言った。親父は僕と同じ小学校の卒業生だった。

昔から富士山はそこにあり。ずっと見えていたんだよなあ……




当たり前なのだが、その事がなんだか不思議でたまらなかったのを記憶している。


おしまい

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