第10話「交換日記」
僕の小学時代の話だ。
6年生になったばかりの4月、好きだった女の子に交換日記を申しこまれた。女の子の名前は、ミーちゃんといった。新しい学年になったある日、ミーがやってきて……
「ねーねー、ミズキ。交換日記しょう」と言われた。
好きな女の子の頼みなら、何でも聞こうと思うが、照れくささもあり……
「交換日記!?なに書けばいいの?」
と、僕はツッケンドンに聞いた。
「何でもいいよ~。ミズキの好きな事書いてくれれば」
と、ミーが言うので、さっそくOKした。
「じゃあ、私が今日書くから、明日渡すね」
と、ミーは言った。次の日。
「ミズキ!書いてきたよ」
と、交換日記を渡してくれた。その場で僕が読もうとすると……
「キャー、ダメダメ!学校で読んじゃダメだからね。家に帰ったら読んでね!!」
と、クギを刺された。家に帰ると、さっそく、交換日記を開いて読んだ。
『これから、交換日記よろしくお願いします。今日はね……』
と、書いてあった。
はてさて読み終えたあと、僕はかなり落ち込んでいた。
『はあ~、何かけばいいんだよ』
なんかいきなり、宿題をやっている気分になった。でも書かなければならないので、とりあえず今日した事を書いた。
『今日は帰ったあと、ご飯を食べてフロ入りました。今から寝ます』
次の日、ミーに渡すと、とっても嬉しそうな表情。
『うっ、なんか罪悪感!!ゴメンネ、ちっとも書けないよ~』
と、心の中でつづやいたのだった。こんな調子で一週間が過ぎた。
ミーは、毎回、嬉しそうに日記を受け取ってくれた。僕はどんどんドヨ~ンな気分になった。
『はあ、交換日記なんか、しなきゃよかったあ!』
と、本気で後悔した。もう憂鬱でしかたなかったのだった。
そんな訳で、とうとう何も書けなくなり、ミーに会うと……
「ゴメンネ!昨日風邪ぎみで寝ちゃった!!」
と、ウソをついてしまった。
こうしてミーとの交換日記は、1日おきから3日となり、つまらないウソが重なり、だんだんとミーの表情が暗くなっていった。そして、そんなミーの表情に耐えられなくなった僕は、ある事を思いついた。
その頃まわりの友達は、僕とミーが交換日記をやっているのを知っていた。実は、ミーはクラスのアイドル的存在だった。だから交換日記をうらやましがられていたのだ。
僕の思いついた事はこうだった。
『みんなで交換日記をすれば、僕が書かなくてもいいんじゃない?』
でな訳で、僕は友達を誘った。友達は僕の誘いに喜んで飛びついた!何日か何人かで交換日記をした。思惑通り、僕は自分が書かない事でホッとしていた。
それからすぐに……
「もうやめよう、交換日記」
と、ミーが言った。
その時わかった。他の友達が入って交換日記をした時に、怒る事も出来たミーだったのに。その事で僕を責めなかったミー。目の前にいるミーは、とても悲しい表情をしていた。
こうして大好きだったミーとの交換日記は終わったのだった。
おしまい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます