第8話「お腹、痛い」

小学校にあがり、一、二週間くらいたった頃だろうか。はたまた、GW明けた頃だったか?

僕は、朝になるとお腹が痛くなった。

小学校も、始めの二、三日は、もの珍しさも手伝って、登校も楽しかった。

でも、しだいに慣れてくると、小学校に上がったものの、何をしてよいのか、分からなくなって来たのだった。


先生に言われて、教科書とノートを出す。その意味が分からなかった。

外は、こんなにも良い天気なのに、僕はどうして、教室の中にいなければならないのか?そして思うのが……

この後、「勉強」というものをしていたら、いったいどうなってしまうんだろうという、見通しの無い不安だった。


勉強てなに?いったい、何をすれば良いのだろう。このやっている事に、意味はあるの?こんな風に感じる時間が、ずっと、つづくの?と、ストレスが溜まって行った。

ある日、朝になるとお腹が痛くなった。

玄関を出たけれど、学校へ向う坂道を、登る事が出来ずしゃがんでしまった。婆ちゃんは……


「行かなきゃダメだよ!」


と、僕に言った。しかし痛くて動けないのだ。

親父も出勤前、一緒に学校に送ってくれたが結局、授業中に痛くなり早退した。

そんな事が続き、婆ちゃんも学校の先生と話したのだろう。お腹が痛くなると保健室へ行かされる事になった。

余談だが、僕にとって今でも、保健室が良いイメージがあるのは、この体験からだと書いていて気が付いた。


静かな保健室。ちょっぴり消毒液の匂いがした。


「ミスキ君は、朝ご飯食べているの?ちゃんとトイレ言った?」


「ううん。食べてない。トイレも行ってない」


「そう。」


と、言って何やら僕の連絡帳に(1、2年の頃は、家庭連絡帳というのがあり、学校と家庭で情報共有をしていた)書き込んでいたのだった。

 連絡帳に書かれた、その次の日から……


「朝はとにかく食べなさい!」


「ちゃんと、トイレに行きなさい!」


 と、婆ちゃんに言われた。

 話しが横にそれるが、朝、食べる事(もちろん、朝起きる為に夜は、早く寝る!)トイレに行く事から、しだいに、お腹の痛みは減っていった。

 しかし、それよりも直接的に治るきっかけになったのは……


「ミズキ~!学校行こうぜ~」

友達の存在だった。玄関を開けると保育園からの友達のカミがいた。

書いていて思い出した!僕は、小学校に入学してから、友達とあまり遊ばなかったのだ。

呼びに来ても、家の中に閉じこもり、工作などをしていたのだ。(それも、学校に行きたくな~い!明日が来ませんように!って)


 朝ご飯を食べるようになったと同じく、いろんな友達がひっきりなしに家に僕を呼びに来た。

今にして思えば、婆ちゃんが近所のクラスメイトの家に頼み、遊びに誘ってもらうようにしたのだろう。じゃなきゃあんなに、ひっきりなしに友達が呼びになんてきやしないし、呼びに来たのは、み~んな保育園からの友達だったからだ。(カミの他、メグっちゃんやコウもいたなあ)

 

小学時代を書いていると記憶の結び目が解け、思っていたのと違う過去に向き合えるのが、面白いし、不思議でたまらない。

 

こうして僕の腹痛は、ピタリと治まったのだった。


おしまい



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