第7話「駄菓子屋」

僕の小学時代の話だ。

小学校の前には、駄菓子屋があった。「駄菓子屋」と書いたのだが、駄菓子だけを売っているだけなく、一応は本来は「文房具店」であり、学校指定用品店でもあった。

 店先には、四角いボール紙にスーパーボールがパッケージングされたものとかが、吊下げられていたり、十円玉二枚を入れて景品を取り出す、ガチャガチャ(ガシャポン)があった。

 タバコ屋みたいな小窓があり、タバコ屋にも見えた。実際、小窓の下のショウウィンドにはタバコがならび売っていた。だから、タバコ屋とも呼ばれていた。そうそう、大人になってから、良くここでタバコを買った。ここで、「しんせい」というタバコを買うのが密かな夢だったのだ、アハハハ。

 駄菓子屋には独特な匂いがあった。体育倉庫と醤油の匂いを、足して2で割った匂いがした。

 思えば、この店でよく買い物をしたものだ。子供同士の社交場となっていたから、しょっちゅう、友達が来てないかとのぞきにも来ていた。また、待ち合わせにもよく使った。

 よっちゃんイカ、冷凍すもも、景品の当たるあんこ玉などなど……十円や百円を握り締め買ったものだ。 銀玉鉄砲、紙火薬をはさんで鳴らす、通称「バクダン」なんてのもあったっけ。 (正式には、ジャンプ弾といったかな)買い物をすると必ず……


「はい、おつり二十万円!」


なんて、駄菓子屋のオバちゃんが言ったものだ。

夏の日、いきなりのにわか雨に、あまやどりに店に入ると、大好きなあの娘もいてドキドキしたのを覚えている。雨あがりに、大きな虹もみたっけ。

この他、3丁目に行くと、ちゃんとした?駄菓子屋もあった。こっちは、今川焼きも売っていた。あっ、となりは確か、貸し本屋だったなあ。


◇◇◇


 この間、数十年ぶりに、駄菓子屋に立ち寄ってみた。小学校は、変わらないままだった。でも、駄菓子屋の場所には……

今は、ビルが建っていたのだった。


おしまい

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