第4話「ランドセル」

上履きの事を書いていたら思い出した。


◇◇◇


もうすぐ小学生という保育園の生活も終わりに近付いた頃、多くの友達が……


「ランドセル買ってもらった!」


 と、喜んでいるの聞いて、『まだ買ってもらっていない!』と焦りとうらやましさで、胸がいっぱいになった。


「早く買いに行こうよ!」


 と、親父に言うと……


「まだ、大丈夫」


 と、そっけない返事で『まだ大丈夫って、そういう事じゃないって!』と思い、ショボンとなっていた。 結局、入学式間近の日曜日に、親父と一緒にデパートに買いに行った。

 売り場につくと、赤と黒のランドセルが沢山並んでいた。僕はとっても嬉しくなって、赤いランドセルに手を伸ばしていた。その時、親父は何の迷いもなく、黒いランドセルを手に取った!

『おいおい、赤いランドセルもあるのに!僕の好みも聞かないのか?』と思い……


「赤いのは?」


 と、聞くと……


「赤は女の子だよ」


 と、親父はそっけなく答えた。『おいおい、決まってるのかよ、俺は赤が好きなんだよ!!赤は女って何!?』 と僕の心の叫びは遠く、親父には届かなかった。

とまあ、複雑な思いもあったが、とにかく買ってもらった黒のランドセル。ピカピカに光ったランドセルは、それはそれで嬉しくて仕方なかった。嬉しくて、嬉しくて仕方ないから、何度も背負っった。そして、何度も背負っているうちに……


ガツン!!


と、どこかにぶつけていまい、革のはしっこが傷ついてしまい、あわてて手でなでても、治るわけでなく、またショボンとなってしまった。結構しょげた。 しょげたてたその上に、さらに追い討ちをかける婆ちゃんの声がした!


「もう傷つかないように、しまっとく!」


 と、ランドセルは入学式まで押入れに、しまわれてしまったのだった。

 入学式の日。帰り道、僕のランドセルは、教科書でパンパンに膨らんでいた。きっと僕の体は小さかったから、ランドセルで隠れるほどだったに違いない。


おしまい


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