第2話「名札」

大人になった今、小学校の前に我が家があり、毎朝の登下校の子ども達を見ることになった。

見ていて気づいたのだが、今の時代は物騒になったせいで、小学生は名札をつけないのだった。

その事に気づいた瞬間、僕の小学時代の記憶がよみがえるのだった。


◇◇◇


保育園の時の名札は、可愛いチューリップの形だとかの花の形の名札だったのだが、小学校に入ると、長方形の事務的なところがまたカッコイイ、四角いビニール製の名札になった。

  名札には安全ピンが付いていて、左肩に付けて使った。フニャフニャのビニール製のケースの中に、少し厚めの紙が入っていて、その紙に名前を書いていた。

 紙にはもう、〇〇小学校と印刷されていて、後は学年と組、名前を書き入れるようになっていた。

 そうそう、親父が名前を書いてくれたのだが……


「あっ、いけね!自分の名前書いちゃった」


 と、親父は自分の名前を書いてしまった。


「婆ちゃんカッター出してくれ!」


と言って、親父は慌ててカッターの刃で、名前を削って書き直したのを覚えている。あと裏には緊急連絡先があり、自宅の連絡先と、親父の職場の住所と電話番号と書きこんでいた。

毎日、着替えるときに名札バッチを付けるのだが、これが結構めんどくさかった。寝ぼけて手に刺して、目が覚めることもよくあった。

つける場所は、胸か肩に名札バッチをつけていた。

そうそう、横着して、帽子につけるのが流行ったことがあった。でも、帽子を脱ぐと分からなくなるから禁止となったのだった。

バッチは、週末など外すのを忘れて洗濯に出してしまう事もあった! すると、字がにじみ、泣き出だしているようになってしまった。

高学年になると、名札を付けるのが、カッコわるい感じがして、あまり付けなかった。すると、先生に怒られるので仕方なく、ズボンのベルト通しに付ける事を編み出したのだった。でもズボンに付けると、さらに外すのを忘れ、またバッチが洗濯機行きになってしまtった。

そんなこんなで、とうとう名前の紙がボロボロになり、学校前の駄菓子屋に、また買いに行くハメになったのだった。(そうそう学校の前の駄菓子屋は、文具取扱い店でもあった)

女の子はお洒落に、名札の端にお花とか動物とかのシールを貼っていた。名札の裏に、クローバーをいれると、両想いになれるなんてあったなあ。名札ひとつにも、沢山の思い出があるものだと思う。

あっそうだ!好きな女の子の名札が、廊下に落ちていて……


「落ちてたよ」


と、ドキドキしながら渡したのを覚えている。


おしまい




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