点、面、切る、削る。
「なら考えられるのは、物理系の魔法ですね」
「物理系の……魔法?」
また意味のわからないことを言い出したたまちゃん。
「それって魔法なのか?」
「ええ、たまにいますよ?身体強化や、皮膚硬化みたいな、物理系の魔法少女」
何を当たり前のことを……みたいに言うたまちゃん。
だが、
「魔法なのに物理なのか?」
魔法とは、科学では説明できないことを言うのではないのか?
物を浮かせたり、火や水を出したり……
なのに物理ってイメージ的にどうなんだ?と思ったのだが、
たしかに、瞬時に身体を強化したり、皮膚を硬化するなんて普通は不可能だ。
魔法と言われれば魔法としか言えないのだが、なんとも複雑な表現だ。
まあ魔法というのだから、魔法なのだろうということで納得しておくとしよう。
「なら物理攻撃で実験してみよう‼︎」
そういうと橘さんは、どこからか木製バットと竹槍を出してきた。
「物理と言えば点と面だよね?学校の備品だからこんなのしかなかったけど、実験するにはこれで十分だよね?」
鼻息荒く訪ねてくるその勢いは、とても今から人を殴ったり刺したりする人のそれではない。
「切る、削るもアリかと思って一応こんなのも持ってきました」
いつのまにかたまちゃんは、鎌とノコギリを持って橘さんの隣に立っていた。
すぐに殴らせろ、刺させろ、切らせろと言わんばかりのキラキラした目で、じっと俺のことを見つめてくる二人、
恐怖しかない。
「やはり物理系の魔法を調べるには、実際にヤルにかぎります」
得意げに胸を張るたまちゃん。
「よし、準備もできたし、雄二郎?殴る?刺す?何からいく?」
おっと……?
なんだか久しぶりに名前呼ばれた気がする。
ようやく俺に意見をいう番が回ってきたようだ。
だが、ビュンビュンバットを振り回し、竹槍で空を突きながら、急かすようにこちらを見る橘さんはすでにヤル気だし、残念ながらやらないという選択はないらしい。
つまり、
俺にバットで殴られるか、竹槍で刺されるか、鎌で切られるかノコギリで削られるかのどれかを選べという、ただそれだけの問いだったのだ。
「………………」
正直、どれも嫌だ。
「多分どれも嫌だと思われることも想定して、各自両刀遣いモードで待機しております」
既に戦闘態勢のたまちゃんは、右に鎌、左にノコギリを構え、不敵な笑みを浮かべる。
「よろしい。では、作戦名、『結局全部やるんだから順番なんてどうでもいいよね☆』」
可愛くウインクを決めてバットと竹槍を構えた橘さん。
………つまり?
「実験開始ぃぃぃぃぃ〜☆」
「結局俺の意見なんて聞く気ないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
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