実践
「実践が一番いいと思います」
そういうのはたまちゃん。
「実践⁉︎」
目を輝かせているのが橘さん。
「………」
黙っているのが俺だ。
内心はこうだ。
(絶対やばい、嫌な予感しかしない)
この流れは何となく先を予想できる。
俺が酷い目に遭う流れだ。
「結局は試すしかないです」
何様のつもりか、腕を組んでうんうん頷きながら何かに納得するたまちゃん。
「つまり私がやってたことが正解だったんだね‼︎」
「………………」
さっきは俺が勝手に死にかけたとか言ってたくせに、流れが来た途端に手のひら返して自分の手柄のように言い始めた橘さん。
もうどこから突っ込めばいいのかわからない。
「で?具体的にどうする?」
声を弾ませて何やら不穏な相談を始めた橘さん。
「そうですね、まずはどんなことをしてきたか教えていただけますか?」
上辺では冷静を保っているが、うちに秘めるわくわくを抑えきれないと言った様子のたまちゃん。
自分も魔法のせいで散々な目に遭ったのだ。
人の不幸話に興味があるのだろう。
「そうね、まずは屋上からバンジー、それからプールで潜水実験ね、あと今は形からってことで、服装や性転換の実験をしてみようってとこ」
屋上からは突き落とされた、プールでは潜水実験なんてレベルではなかった。
よくもまあ平然と嘘をつける。
……いや、本人的にはまじめにそのつもりなのかもしれない。
たぶんそうだ。
「なるほど、それで、何か成果はありましたか?」
思い起こすのも恐ろしいトラウマものの記憶がフラッシュバックする。
迫り来る地面、息のできない絶望感、そしてあわや大事なところを切られかけたのだ。
あれレベルのことをこれからしろと言われれば逃げ出したくなるかもしれない。
「潜水実験の方は全くかな、屋上バンジーの方はもしかしたらって感じがあったけど」
あの高いところからの着地が異常に上手いってやつか、
意識が飛んでいたので記憶にはないが、すごかったらしい。
それこそ魔法としか考えられないくらいに。
話に聞く魔法少女の魔法レベルを思うと、これかなという感じはするが、魔法少女になった最大の目標である、最強魔法少女決定戦での優勝を考えるとあまりに心許ない。
故にもう少し実験して、せめて戦闘時に使えそうな使い方を模索しようというところだ。
「つまり、物理的な衝撃には強く、特殊な状況時には役に立たない系の魔法という可能性がありますね」
これまでの情報をまとめて推論を立てるたまちゃん。
「そうなの‼︎ただもしかしたら発動条件的なのがあるかもと思って、こうして色々試して可能性潰してたの‼︎」
バァン‼︎
と、女子用スク水着用中の俺をドアップする橘さん。
素直にやめて欲しい。
「流石に切るのは拒絶されたけど、服装はやってみたよ‼︎」
まるで自分のことのように俺のことを話す橘さん。
「収穫は?」
「ない」
「そうですか……」
……急に淡々と会話し出すのほんとやめて欲しい。
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