振り返ると、

「お腹を空かせてぶっ倒れたたまちゃんがいたんだよね〜」


「その節は大変ご迷惑をおかけしました」


「………」


「あの頃はちょうど魔法少女になったところで、まさか気配を消す魔法なんて知らず、急に誰にも気付かれなくなり、3日ほど飲まず食わずで、本気で死を覚悟しました」


……どうやら、たまちゃんも魔法少女になりたての頃は苦労したようだ。


「百之助にろくな説明されなかったから、ほんと酷い目に遭いました、急にみんな私が見えなくなったみたいになって、お店に入っても店員さんに気づかれないし、家に帰ってもお父さんもお母さん私が見えないみたいになってて……」


あの怪生物、百之助なんて名前だったのか、魔法少女とかファンタジーなくせに、すごい和風の名前なんだな。


それに、


どうやら、誰にでもろくな説明もせずに放り出しているようだ。


「春香ちゃんに見つけてもらえなかったら、今頃私はあの人通りの少ない道の真ん中で、誰にも見つかることなく干からびていたことでしょう」


「連絡先交換したのも、また魔法のせいで死にかけたら助け呼ぶためだったよね、魔法の性質については頑なに教えてくれなかったから驚いたよ、まさか影が薄くなる魔法なんて」


「いつも助かってます、恥ずかしかったので、魔法のことは黙ってました……」


……まあたしかに、


制御不能の影が薄くなる魔法なんてもののせいで周囲から無視されろくに食事もできず死にかけたなんて、悲しすぎるしあまり言いたくはないだろう。


「いいよいいよ、貸しってことにしといてあげるから」


容赦なく恩に着せに行った橘さん。


「ありがとうございます」


たまちゃん………なんと不憫な


「でもやっぱり、百之助のせいなんだね、実はこの雄二郎も先日魔法少女になったみたいなんだけど、たまちゃんと同じようにろくな説明もされずに放り出されて、自分の魔法すら分からないの」


「ああ、なるほど、それでこんな格好を……」


………?


ようやくたまちゃんの警戒が解けたようで、視線を橘さんへ向けて話し始めた。

が、どうやら少し勘違いをしているらしい。


決してこの格好は俺が魔法少女になったからしている訳ではないのだが、


「そうなの‼︎ほんと、何度が死にかけたりして大変なの‼︎」


……おい、


格好だけでなく、死にかけたことまで魔法のせいにしやがった。


「そうでしたか、そいゆうことなら、私に出来ることなら是非協力させていただきます」


………よせ、仲間を見る目でこっちを見るな


いや、ある意味同類なのかもしれないが、なんか嫌だ。


「ほんと!?ありがとう‼︎さすがたまちゃん‼︎」


…………こうして、


俺の魔法解明に、魔法少女たまちゃんが協力してくれることになった。

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