急転
あの後結局、俺は着たままだった女子用スクール水着で橘さんの学校を出た。
というのも、ブーメランの方は下着を履いていないから履くと言い出した橘さんに履かれてしまったのだ。
そんなわなけで、敷地面積約20000メートルほどの学校内を、校門までの最短期であるグラウンドを300メートルほど突っ切る形で駆け抜けた俺は、住宅街へと入った。
橘さんの家は、ここから徒歩30分ほどの場所にある。
そこまでなるべく……というか、絶対人目に付かないように、道沿いに立ち並ぶ電柱に身を隠しながら、素早く移り渡り、クリアリングを欠かさず、慎重に進んでいく。
まるで犯罪者にでもなった気分だ。
「私思ったんだけどさ……」
そんな俺の気など知るよしもない橘さんは、
堂々と道の真ん中を歩きながら(いや、普通に制服着てるからそれで問題ないのだが……)急に深妙な面持ちで語り出した。
「何だ?」
そんな悠長に話をしている余裕などない。
と突き放したいところだったが、そうはできなかった。
なんだか、今回は雰囲気がいつもと違ったのだ。
真面目、というか、普通なのだ。
表情もいつもの裏がある感じじゃないし、悩みを打ち明ける、みたいな雰囲気。
ついこちらまで真面目に言葉を選んで返してしまうというものだ。
だっていきなりだし、今まで散々ふざけたこと抜かしてきたのに、急にこんな真面目な雰囲気を出してこられた、こちらの背筋も自然と伸びてしまう。
脳内のキャラと実物のギャップがあまりに大きく、違和感を感じるというか、気味が悪いというか、とにかく変だ。
「あのね……」
と引っ張る橘さん。
これまでにない安心感と共に橘さんの次の言葉を黙って待つ。
まるで告白でもして来るんじゃないのかと思えるほどに言いにくそうな、でも言いたい気持ちを抑えられないといった葛藤すら見て取れるその表情は、ただ待っているだけのこちらまでソワソワと落ち着かない気持ちになる。
「いやね、もういっそ、他の魔法少女に聞いたら?って思って」
と、
そんな彼女は言った。
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