撤収

……なんてことを1時間ほど続けた頃。



調子に乗ってポーズをとる俺を、スマホの容量いっぱいに写真を撮った橘さんは、


「よし撤収」


と言ってスマホをしまうと、


「ど?魔法出そう?」


と今更ながらに聞いてきた。


……………

………………


「いや……」

「そか……」


まあ、わかってたことだが、着てる服を変えたところで魔法が使えるようになるわけがなかった。

「……まあ、わかってたけどね」

「わかってたんかい‼︎」


わかってたんかい‼︎


「そりゃ着てる服変えただけで魔法使えるようになったら苦労はないって」


えぇ……今?


「………そりゃぁ、そうだな」


ならなぜやった??


「絶対そっちの方が似合うと思ったんだもん」


「あそう……」



……………


………………


嬉しくないぞ?



「帰ろうか」

「だね……」


これ以上は不毛なので諦めて帰ることにした。


「ところで着替えは……」


辺りに身につけられそうなものが何も見当たらない。


流石に女子用スクール水着で外を歩いて帰るのは色々と危ないので、軽く羽織れるものでもないか尋ねてみる。



「え?もう着てるじゃん?」


何を言う?みたいに真顔で返された。


「え?着てるって、今着ているのはただのスクール水着だが?」


真顔で聞き返してしまう。


「うん、だからそれ、着てるじゃん」


「……………?」

「……………………??」


しばらく無言で見つめ合う。


お互い何言ってるのか理解できないと言った感じだ。


「いや、だから、服だよ、こんな水着じゃなくて、もっと普通の……」



「??さっき言ったじゃん、それかブーメランしかないって、それ以外なんてないよ?」


そう言ってさっきまで俺が着てたブーメランを掲げてくる。


「ええ………」



何故……


何故こんなにも話が食い違うんだ⁇


………ああ、この人着る物に執着ないんだった。


裸族だから。



「あともしかしたらその格好でい続けたら魔法使えるかもしれないし、しばらくその格好でいよ?」


「えぇ〜……」


結果、


見たくもない黒歴史を大量に撮影されただけで、肝心の魔法は使えるようにならず、得た物といえばスクール水着(女子用)くらいなのだった。

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