形から(譲歩)

「形からって?」


話ではそう決めたが、形からというとつまり服とか髪からとか見た目を変えるところからということになる。


つまり男の俺が少女のような見た目を目指すということだ。



………………。



………………?




………いや?


意味あるのか?


見た目を変えたところで俺が男であることに変わりはない。


それこそさっき橘さんが言っていた改造手術でも受けて体をいじるところから入らねば、魔法が使えない理由である性別をクリアできないはず。


見た目に意味があるとは思えないが………


「あら?こんなところに私のスクール水着があるよ?制服は着てるし体操服は持ってきてないからとりあえずこれ着よっか?」


そんなこと知ってか知らずか、橘さんはどこから出してきたのかわからない女子用スクール水着を掲げて目を輝かせていた。


俺に着ろということらしい。


「ああ、ありがとう」


………何がありがとうなんだ?


自分で言いながら訳がわからなくなる。


がつい受け取ってしまう。


そして…………





「うんうん‼︎似合ってる‼︎似合ってるよ‼︎私初めて見た時からずっと思ってたの‼︎雄二郎にはブーメランよりこっちだって」


大はしゃぎして満足気に頷く橘さん。



「………………」


俺は混乱している間に、煽てられ、流されるままに着てしまっていた。


女子用スクール水着を、


そして今、




モデルが如く保健室のベットの上でポージングを決めている。



それを自前のスマホでパシャパシャ連写しながらはしゃぐ橘さん。


「いいよいいよ〜‼︎もう一枚‼︎そう‼︎もっとセクシーに‼︎」


橘さんの言葉には不思議な説得力があった。


それがいいかとか悪いかとか、似合ってるかとか似合ってないかとかそんなことは聞いてないんだが、褒められたことに少し高揚感を得ている自分いた。

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