今度こそ
「ハッ――!?」
目が覚めると、そこには見知らぬ天井が広がっていた。
「よかった、目が覚めた」
そして聞き覚えのある声。
声のした方へ首を回すと、橘さんが俺の手を握って座っていた。
「……何があった?」
プール底に沈んでから3分ほどまでは記憶があるが、窒息してもがき出してからの記憶が曖昧だ。
……いや窒息してるんだから当然と思うが、何というか、
今回はあの変な夢すら見なかった。
いつも寝るなり意識が飛ぶなりすると決まって見るのに、何があったんだ?
もしかして無意識のうちに魔法を使ってここまで来たとか?
だとしたら、いよいよまじめに無意識で発動する系の魔法が期待できるのでは……?
「最初のしばらくはぷくぷくしてたんだけど、それが止まってしばらく待っても浮いてくる気配がなかったから、仕方なく引き上げて、息してなかったからとりあえず、人工呼吸とAEDで蘇生して、保健室に運んだの‼︎もうダメかと思ったんだから‼︎」
……そんなことはなかった。
それはなんとなく最初からそんな気はしていたのでアレだが、なんでこいつはこんな嬉しそうに喋ってくるんだ?
内容もなんかおかしいし……
ぷくぷく止まってしばらく待った?なんですぐ引き上げない?
息してなかった!?
蘇生!?つまり俺死んでたの?
しかもそんな状態の俺への対処が救急車呼んだとか病院運んだとかじゃなく、保健室だって!?
なんか色々ぶっ飛びすぎて理解が追いつかない。
ツッコミを入れる気も起きないが、ただ一つ言えることは、よく目が覚めたな。
そして夢を見なかったのはなんで?なんて疑問に思っていたが、死んでたんだから当然夢も見ないわな。
うん、納得した。
「で?魔法は?」
そう、そこさえわかれば全ては報われるのだ。
それを調べるために命をかけたんだから。
「さあ?使ってたかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
……は?
「え?なぜ断言できない?見てたんだろ?」
沈んでただ窒息してただけなら素直にそう言えばいいのに、なぜぼやかす必要がある?
「いや〜、水面は見てたんだけどね、今思えば、水中を観測する手段がなかったね、ドンマイドンマイ」
「おい⁉︎」
つまりあれか、
水中カメラ的なものを用意してなかったと?
人が死ぬ思いしてるのを、安全地帯からただボーっと眺めてただけと?
気づけよ⁉︎
「さて、今回は残念な結果になってしまったけれど、気を取り直して次の手を考えよう‼︎」
「おい⁉︎」
ああ、アレだ、こういうのを、
……無駄死にというのか、
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