じわじわ来る系……
というわけでやってきたのは前回と同じく橘さんの通う私立ノーブル中学。
その敷地内にあるプールです。
現在時刻は午後の10時を回ったところ。
当然水泳の授業などあるはずもなく、誰もいないプールサイドに一人、両手足をガムテープで縛られた状態でユラユラ波打つ水面を見つめています。
こんなところにやってきて、こんな格好で一体何をするかという話ですが、
沈みます。
深さ5メートルのこのプールに手足を縛られ、重しと称したコンクリの塊と紐で結ばれ、プールに投げ込まれるというのです。
もちろん命の保証はありません。
安全とか、保証とか、そんなものはここへ来るまでに捨てられました。
この場にいるのは俺と背後に橘さんの二人だけ、
そして安全装置など当然ないこの紐とコンクリを沈め、引きずられるように俺もプール底へと沈むのです。
そうしてじわじわ死に向かう中、以前のように魔法が発動して生還、その瞬間を正確に観測、どのような魔法かを判別するという計画です。
…………………いやはや、
困ったものです。
全く、無茶というか、何というか、
「いやだいやだいやだ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ………」
というかこのプール深くない?
何?
世の中楽しいことで溢れてると、悟りを開き始めていたのに、それら全てを投げ捨ててまですることがこのまるで海底に揺らめく昆布の真似事だというのか?
いやそんな訳ない。
なぜなら以前の俺ならいざ知らず、今の俺は真っ当に生きると心に誓った。
もうやけになってタピオカの空きカップをそこらに捨てたりしないし、歩きスマホもしないと決めた。
なのに何故こんな目に遭わなきゃならない?
命の危機に力が目覚める的な展開を狙っているのは分かる。
分かるが、それまでに味わう恐怖と絶望、他あらゆる苦痛は計算に入っているのか?
所詮は人ごとだと楽しんでる節はないか?
……………
………………。
「………気は済んだ?」
「…………はい」
「よし」
バシャン‼︎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます