主人公

はーい、


という訳で、俺、こと柚木雄二郎は現在、先日お知り合いになった橘さんの招待を受けまして、彼女の通っている『私立ノーブル中学』の校舎屋上へやってきましたー(いえ〜)


なんと5階建て、高さ約15メートルです。


なぜ、そんなところに来ているのかと言いますと、実は私、先日魔法少女になりまして、魔法が使えるようになったはず、なのですが、これがまた、一切使える気がしない。


ならば‼︎


と、ここにいる橘さんが漫画やアニメでよくある、主人公が追い詰められた時に秘められた力に目覚める的なあのシチュエーションを意図的にしてみよう、という感じのノリで、つまりは、軽くここから飛び降りるつもりでやってきました。



……………………さて。


小一時間ほど引き伸ばすつもりで考えていた話題が、ものの一分で語りおえてしまった。


もう飛ぶしかない。



飛ぶしかないぞ〜。


……………………。



いやいやいや、


死ぬ死ぬ、


こんなん死ぬわ‼︎


追い詰められた状況とか今じゃん?


残念ながら魔法とか秘められた力とか覚醒する感じが全くしないんだけど?


こんな状態で飛んだところで無駄死にするだけじゃ?



だいたいこんなん最初から無謀な話なんだよ、もっとこう、徐々に追い込む方法とかの方がいいに決まってる。こんな、一瞬のことで、ミスったら即死みたいな、賭けなんて、絶対間違ってる。


……よし、一旦戻って橘さんに相談だ。


「………なあ、橘さん」


…………と、


振り返ろうとした時でした。




「早よ飛べ」


……………えっ!?


「えっ⁉︎」


背後から誰か、


今この屋上にいるのは俺の他に一人しかいないから間違いなく橘さんに、背中を思いっきり蹴られた。


端の端につま先を出す形で立っていたのに、そんなことされたら当然一歩前へ踏み出してしまうわけで、


踏み出したところで踏み締める地面などなく、


正確には15メートル下なわけで、



……………はい、


「おっちまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす‼︎」



落ちた。


落とされた。


最後に見た橘さんのワクワクがとまらねぇって顔は一生忘れない

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