俺の魔法②
「で?どうすんの?最強の魔法を決める大会なんでしょ?」
真面目に困惑している様子の橘さん
眉を顰め、腕を組んで首を傾げている。
「…………はい」
正座して俯くしかない俺
「魔法が分からないって、魔法なしで優勝目指すつもりだったの?」
「……いえ、魔法は追々使えるようになればいいかなと思い……とりあえず最低限に準備をしておこう……かな、と思いまして……」
なんだか、事情を話せば話すほど、自分の無計画さと言うか、適当さと言うか、が恥ずかしくなって、気持ちどころか、声まで小さくなる。
「だいたい、魔法がわからない?どうして?普通魔法少女になったからにはこう、自然と何か使えるようになるとか、ある程度の説明があったとか、ないの?契約する際現れたんでしょ?アレ」
せめて手がかりは?と、色々質問をしてくれる橘さん
アレ、とはたぶん、怪生物のことだろう
「………ないです」
だが残念ながら、何の手がかりはも持ち合わせていない
あれだけ自信満々に最強だ魔法少女だ言っておいて、そもそも魔法が使えない〜とか、なんの冗談かと思う。自分でもそう思う。
でも真面目な話、最初に言ってたらまず契約してくれないじゃん?
説明も、されたみたいだけど、記憶にないし、
……あのやばい薬のせいで。
などなど、考え込んでいるうちに、
「…………」
「…………」
とうとう会話がなくなった。
「…………うーむ」
「うーむ………」
考え込むことしばらく、
「……………なら、そこからだね」
と、唐突に橘さんが口を開く。
「…………そこから、とは?」
いや、なんとなくわかるけど、
「ほら、よくあるじゃん?漫画とかアニメでさ、めちゃくちゃ強い敵とかに追い詰められた時、すごい力に目覚めるとかさ、アレやろ」
名案を思いついた‼︎みたいに目を輝かせる橘さん
「…………はい」
いいたいことはわかる。
わかるが、アレとは、つまり、漫画やアニメでよくある、主人公の覚醒だろう。
漫画やアニメで、最初に何の力もなかった主人公が、悪者に死ぬほど追い詰められ、もうダメだって時に奇跡的にすごい力に目覚めた‼︎的なことをしようと、そう、橘さんはおっしゃっているのだろう
漫画やアニメで、つまりフィクションで、作り話の中の話を、現実にやってみようと、
この、主人公でもなんでもないただの一般人である俺に、そんな死ぬほど追い詰められるような目に遭えと、
もし何な力にも目覚めなければ、また、目覚めたところで状況を打破できるようなものでなければ待っているのは容赦のない"死"であるのに、そんな賭けをいきなり何の保証もなくこの俺にしろと?
そんなリスキーなこと絶ッ対にいゃ……
「じゃ、まずは高所からの身投げからやってみよっか?」
「はい、喜んでやらせていただきます」
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