再来

「ふーん、ここがあの子の家の近所なのか、いいところだね」


お前まじでついてくるんかい。


俺は朝一から、昨日使ったのと同じ移動手段で、来た道をそのまま戻る形で昨日お世話になった橘春香さんのうちまでやってきた。


最初から一人で来るつもりだったのに、当たり前みたいにこの怪生物はついてきた。


密かにペット持ち込み禁止とかの理由でサラッとコイツをペット扱いした上で、置き去りにし、大笑いする計画だったのだが、


電車にもタクシーにも平然と乗ってきたし、運転手も駅員さんも何もいってこないし、一体どうなっているんだ?


「さあ、ここが彼女のうちの前だろ?早くピンポンを鳴らすんだ‼︎そして契約を……」


………こいつ。


口を開けば契約契約と、怪生物の本能的なものなのか?魔法少女に契約迫りすぎて頭の中が契約のことでいっぱいなのか?



まあ、ピンポンするけど……


ピーンポーン。



「はあーい、ちょっと待っおっ!?え!?」


ガチャガチャガッシャァァァァン‼︎‼︎



「………」

「………」


……………………。



……何があったん?



「………ずいぶんとアグレッシブな子みたいだね」


さすがの怪生物も少し引いている。



〜5分後。


「おまたせしました〜、いや〜最近片付けしてなくて、散らかってて、お騒がせしました〜って、昨日の‼︎おはようございます‼︎雄二郎さん‼︎」



「おはよう、朝から元気だね……」


そう、返すのが精一杯だった。


慌ただしく玄関のドアを開いて出てきた彼女、橘春香さんの後ろにチラッと見えたウチの中、


その光景を見なかったことにするだけでこんなに集中力を使うとは思わなかった。


……………。


「随分と物が多いみたいだね」


ようやく出てきたのがこの一言。


橘さんの家は、何というか、ものすごく散らかっていた。


ゴミ……というわけではないだろう。



なんだか機械の類が一杯だ。


「いや〜お恥ずかしい‼︎私もの集めが趣味なもので〜」


可愛く照れる橘さん

だが内容は全然可愛くない。


「……それともう一つ気になってたことがあるのだが、その服……」


「……服?別にいつものだけど?」


昨日は制服だったが、今日は私服だった。


胸のところにデカデカと『最強‼︎』とプリントされた、見るからにサイズが大きいTシャツだ。


俺が気になったのは、その絶望的なセンスの無さだけではない。



膝上10センチくらいまでの長さで、まるでTシャツしか身につけていないように見える。


………流石に穿いているいるとは思うが、自宅とはいえ、少し楽な格好すぎないかと、何の警戒もなく出てきたし、橘さんの防犯意識の薄さが少し心配になったのだ。


………決して穿いているかどうかが気になっているわけではない。



……………。


穿いてるよな?



「えー?やっぱり変だよね?」


自覚はあったのか、あっさり認める橘さん



「私基本裸族だから、外へ出る時以外は基本裸なんだよね〜」


…………なんだって⁉︎


「これも着なさすぎて埋もれてて、無理に引っ張り出したら雪崩が起きたの」


と言いながらTシャツの裾をピラピラする橘さん


「あそう……」


もう見てられなかった。


どうやらこの子は、外ではしっかり者だが、家の中ではだらしないを通り越して裸族だったようだ。


「こんなところで立ち話もなんだから、上がってってよ‼︎お茶でも出すから‼︎」


クイクイッと親指で玄関をすすめてくる。


「ああ、はいお邪魔します」


もはや客の侵入をお邪魔しているブツ達に目が釘付けになりながら無心で返事をする


余計なことは考えないことにした。


……………そういえば、


余計なことついでだが、怪生物の姿がいつのまにかなくなっている。


どうやら、さっさと逃げたようだ。


絶対に許さない。








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