第3話 ならず者の街 デスペラード
さて、彼女の後を追いかけて、いく数分ほど歩いたところ、次第に森は開け、連なる白い壁。つまり城壁らしき所まで来た。
おそらくこの城壁の先に町があるのだろうと、容易に想像できるが、はてさて現代社会において過去の遺物である城壁がなぜ必要なのだろう。ちなみに俺はまだここが日本の未開の地、群馬《グンマー》あたりだと、ぎりぎり信じている。
「ここって日本っすよね?」
「……違うとも言えるし、そうとも言える」
「あいまいだね……。まるでピーマンとパプリカみたいだな」
「誰にもそれを確認するすべはない。死ね」
「ここに来て長いの? ねえ、ちなみに君の名前は??」
「……ッチ」
長い道中、暇だったのでしつこく話しかけていたところ、それが功を奏し、かなりの確率で俺の質問に答えてくれるようになった。
ようやく俺に心を開いてくれたらしい。
というか、その道中で割と重要な設定を聞いたんだが簡単にそれをまとめると。
「実は俺らは死んでいて、このファンタジー世界から帰る……つまり生き返るためには、あの塔を攻略しなきゃならないってことだよな? んで、未だにそれを攻略した奴はいないと……HAHAHA! 何の冗談だい、草生えるわww」
と、テンションの高い外人の真似をしながら城壁の外からでも見える白壁の巨塔を指さす。
「そう」
「まるでラノベかゲームみたいだな!」
「そう」
「え?」
まあいいや。
とりあえず今後の大まかな方針は決まったような感じだな。別に生き返りたいと思わないが、少しだけこの可笑しな世界に興味が出てきた。
門番不在の城壁を越えると、賑わう人の声で出迎えられた。
ファンタジーゲームから飛び出してきたような格好で行きかう人々。
町並みは中世ヨーロッパを思わせる古い町並みでいて、ますます現実離れしていた。
「私のギルドはこっちだから……貴方はまず、ギルド登録所へ行くべき」
「ギルド? どこにあるのか、何をするところなのか具体的に教えてくれないか? それと俺の名前は吉広ね」
少し待つが返事がない。
また無視されたのかな? いや、彼女の好感度はもうMAXのはずだが。
ぐるりと辺りを見渡す。
「いねえ!!」
せめて道案内ぐらいしてくれてもいいのに……
だが、落ち込むことはない。俺のコミュ能があればギルド登録所なんてすぐに見つかるだろう。
おそらく名も知らぬ彼女もそう思って、俺を置いて行ったのだろうとそう思いたい。
「いっちょ探しますか」
スーツの襟をキュッと締め、歩く。目指すはギルド登録所だ。
これって、なんてVRゲームなんですか? @kururusougun52
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