「全て」を楽しめ! 「全て」が、 あなたの人生そのものだ。

「全て」を楽しめ!

「全て」が、

あなたの人生そのものだ。

人生何もないより、なんかいろいろあった方がいい!

~ある芸術家との対話。


大きな失敗をして、

それを周りの誰にも相談できない時期が結構続きました。


一番つらかったのは、胸の中で暴風雨が吹いているのに、

周りには気づかれないように

普段と変わらず仕事をしなければならないことでした。


僕の仕事は内部も外部もたくさんの人と接する職業だったので、

とにかく人と平気で会話をしている「ふり」をするのがつらかった。

これが、一人で黙々とできる仕事だったらなぁ、と何度か思いました。

(でもよく考えたら、それも辛いですよね。人と接すると気がまぎれる場合があることも事実です。)


みんな、僕の「失敗」を知ったら、

今は笑って話しを聞いてくれているけれど、

どんな顔、態度をするんだろう。


そんなことを心で思いながら、チームリーダーとして、

スタッフを日々まとめあげていました。

今思うと、よくやったと、自分に言いたい。

でも、さきほど、書いたように、悩みを抱えながら、

人と接することで、

いろいろな気づきに出会えることもありました。


あるプロジェクトで、

たまたま有名なアーティストの方に出会う機会がありました。


歳は僕と同じくらいで、

おしゃれで、金持(たぶん、有名で売れっ子でしたから)

人望も厚く、才能はピカイチで、

かといって、いわゆる芸術家肌の天才タイプではなく、

物分りのいい秀才タイプ、

あー、世の中にはこんなに恵まれた人生を歩んでいる人もいるんだなー、と、来る絶望に恐怖を抱きながら、仕事をしていた僕は、とてもうらやましく、いえ、憎らしくさえ思っていました。

きっとこの人の人生には、

僕のような「絶望」はなかったんだ、そう思っていました。

でも、、、


非常にハードな仕事で、徹夜明けの最終日、なんとなくゴールも見え、みんなで無駄話をしていた時でした。

一人の僕の下の若手が、そのアーティストに、今、僕が書いたようなニュアンスで、自分も○○さんのような人生だったらいいのにと、吐き出すように言いました。

きっと彼も悩みがあったのでしょう。

(それに気づいてあげられなかったのは、

自分の不徳の致すところです。)


すると、その人は怒った様子もなく、平然と

「全然違うよ~」と明るく笑いながら、

ためらいもなく、自分の人生を問わず語りに語り始めました。


その人生は壮絶でした。

恵まれている人生があるとしたら、その真逆が彼の人生でした。

詳しくは書けませんが、

特に彼が見舞われたトラブルは

普通の人にとってはまさに致命的なものでした。


芸術家だからと言って、誇大表現しているわけでもないでしょう、

そのことは、彼の語る口調でわかりました。

きっとハードな仕事の緊張が解けたあとだったせいもあるのでしょう。

彼は実にリラックスした感じで自分の人生を語りました。

まるで、他人ごとのように。

そして、最後に言ったひとことが忘れられないものでした。


「まさか、自分の人生がそんなことになるなんて、

 思ってもみなかった。すげー悩んだ、

でも悩んで思ったんだ。

 でも、人生何もないより、

なんかいろいろあった方がいい!

おもしれーじゃん、俺の人生って。」

そして、その若い社員に言いました。

「全て」を楽しめ!

「全て」があなたの人生そのものだ。


一瞬、シーンとなった部屋の雰囲気を

彼の笑い声が暖かく響きました。

部屋にいた人間全てが感動していましたが、

「絶望」を抱えた僕の胸には、より深くその言葉が響きました。

あの言葉がなければ、

その後、仕事をちゃんとできなかったかもしれない。


「全て」を楽しめ!

「全て」があなたの人生そのものだ。

人生何もないより、なんかいろいろあった方がいい!


「絶望」を経て立ち直った今、

より彼の言葉が、身に沁みています。

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