絶望は、チャンスだ!

おめでとう、

それはチャンスだ!


居酒屋の哲人 曰く。

おめでとう、

それは、いわばチャンスだ。今までの人生を変える。


この言葉は、まさに僕が大失敗し、奈落の底に落とされ、その沙汰に怯え、自暴自棄になっていた時に、

なじみの居酒屋のご主人に言われた言葉です。


その時期、僕が何かに失敗したことは、なぜか周りの人々になんとなく知れわたっていて、色々な人が心配してくれたり、大丈夫だよ、大したことない、きっとなんとかなるさ、と元気づけてくれたりしていました。


が、僕は、自分で言うのもなんですが、割とちゃんとしたサラリーマンだったので(あえて言ってしまいますが、割と優秀な「仕事人間」でした)

僕のした失敗が社会や会社にどう受け取られ、その被害を蒙った相手がいる以上、その沙汰は決して甘いものではないことを予測していました。

世の中には、素晴らしく心の広い楽観的な人が結構いて、

僕の話を聞かないまでも(その内容は話してはいけないことになっていたので)自分の生きているサラリーマン人生において、

友人や同僚、知り合いに、

まさかそんなことは起きないだろうと思っている人がほとんどでした。


でも、僕は違いました。

多くの「仕事人間」のサラリーマンの仕事は、リスク回避であり、

逆に言えばリスクを想像できる力です。

そういう人が、今のサラリーマン社会の中では優秀と言われることは、

リアルなサラリーマン社会に生きる人なら、理解できると思います。


どう考えても、甘い結果にはならない、

そう判断した僕は、内容は言わずとも、

(会社や仕事のことかどうかも、話してはいませんでした。)

予測できる結果は、そう甘いものではない、かなり相当に人生を変えるほどのダメージだと、大将にそれとなく漏らしたのです。

大将もそれまでは、みんな同様、僕を元気づける意味で、

「大丈夫、そんなに社会は厳しくないよ」と言ってくれていたのですが、僕の性格や仕事ぶりをよく知っている彼はそれを聞いたとたん、

こういったのです。


なら、おめでとう、それは、いわばチャンスだ。

今までの人生を変える。


この言葉で、僕は悪い酔いが覚めた気分になりました。

大将もリストラの嵐が吹き荒れる中、サラリーマン人生を捨て、成功するかしないかわからない未経験の事業(居酒屋経営)をみんなの反対を押し切り始めた時、そう思うことで、自分を鼓舞したそうです。

後々、あのピンチがなかったら、

今の人生を送るチャンスは逆になかったと思っていたそうで、

いつ、この言葉を僕に切り出すか迷っていたそうです。


逆転の発想と言ってしまえば、それまでですが、リアルな人生の中で、

この言葉を体現した人を見た時、僕は、絶望をチャンスに変える言葉があることに気づきました。


本当にいい大将のいる居酒屋は、人生のよりどころになりますね。

ただ、深酒をして愚痴ばかり言っていると、失敗したまま、前に踏み出せないままでいることもありますので、要注意。


深酒を商売抜きに止めてくれる大将のいる店がおすすめです。

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