少女の朝
朝。異世界へ旅立つ朝。
あたしは興奮して眠れなかった。だって、非日常が目の前に迫ってるんだよ。こりゃ、一大事だよ。言うなれば選ばれし者の恍惚と不安ってやつね。
募集のチラシを見た時から、幸運堂が普通じゃないのはわかってはいたけど、まさか本当に異世界が存在するなんて、あたしゃ思わなかったよ。
あの適性検査。あれヤバかったよね。瞬きしたら一瞬で大草原だもん。そんなことってある?
今までの平凡な日常はなんだったの。
あぁサンタクロースを信じてた小学五年生までのあたしよ、あんたが思い描く世界は間違っちゃいなかった。そして、サンタクロースの存在を否定してきた同じクラスの山田君よ。あんたは間違っていた。
そんなことより、犬皇界ってどんな世界なんだろう。昨日見せられた書類にイラストがあって、それにはかなり可愛らしい二足歩行の犬が住人として描かれていたけれど。
期待を胸に抱きながら、準備を済ませたあたしはリュックを背負った。
異世界への旅立ち。うーん。素晴らしい!
何を持っていけばいいか聞くのを忘れたから、リュックの中には色々と役に立ちそうなものを詰め込んできた。
なんか旅の支度ってワクワクするね。旅自体は楽しいことばかりじゃないけれど、旅の支度は楽しいことだらけだ。
あたしは意気揚々と家を出る。
昨日の様におっかなびっくりではなく、期待に胸を膨らませているのだから、足取りは軽い。
期待というのは空気よりも軽い気体なのかしら。体を軽くする。キタイだけに。なんちゃって。
おっと、誰もいないときだってのに面白いギャグが浮かんじゃったよ。もったいない。もったいない。純が居る時に言えば上手く突っ込んでもらえたのになぁ。
……そんな風におめでたいあたしはルンルン気分で幸運堂に向かったのである。
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