潜入捜査

行方不明の茉都香を絶対見つけ出そうと小さな身体で一生懸命な透に、わたしはあの時何も出来なかった無力な小学生の頃の自分を思い出し重ね合わせていた。

だが、失踪したというだけでなく、その上妊娠までしていたという茉都香の秘密を知らされた今、わたしの心の奥で亡くなられた中條先生の末期の状況とがオーバーラップし始めていた。

透が危惧していた様に、茉都香のお腹の中から赤子が掻き出され、もしも茉都香までもが、あの時の中條先生みたいに無惨な姿で殺害し遺棄されて、発見され様ものなら、わたしは今度はもう堪えられそうもない・・・それにこの透だってきっとどうかなってしまうに違いない。

小学生の頃のあの職員室以来、いつの間にかわたしの身体の中にスルスルと入り込んで来る目に見えない蛇の様な邪悪な何かに心臓をギューと締め付けられ、目の奥がぐるぐると立ち眩み、何度となく引きつけを起こしては昏倒する様になっていた。

茉都香の為に一緒に泣いてくれたこの心優しい少年に、これまでのわたしと同じ苦しみを味あわせる訳にはいかない。まだ間に合うのならば、茉都香の為に、透の為に、何よりわたし自身の為に、ふつふつとわたしの内部から見えざる敵に立ち向かう勇気が湧いてくる。

願わくば、呪われた中條先生の恨みもどうか消え去りますように。




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