潜入捜査
期待していた何人かには会えず終いだった事もあり、この学校にはまた日を改めて潜入することにした。それでも夏休みである事を考えれば、上等である。
今回の聞き込みで得られた情報を元に、今後は予備校やバイト先などにも捜査の手を拡げていこうと思っている。
一旦、本日の捜査の進捗状況をおばさんに知らせる為に茉都香の家に立ち寄った時、見覚えのある透くん(11)という近所に住む小学生の男の子に声を掛けられた。
透くんは、茉都香が小さい頃からよく面倒見て遊んであげていた男の子で、わたしも彼女につきあって一緒に何度か遊んだ事がある。
でも、久し振りに会ったというのに、なんだか思いつめた顔をして、わたしの父の職業について聞いてきたりするものだから、何か悩み事でもあるのかと心配になり、わたしは彼に尋ねてみる事にした。
「どうしたの?学校でイジメにでも遭ってるの?」
「茉都香ちゃんには誰にも内緒の秘密があるんだ。栞姉ちゃんはそれを知ってるの?」
透は首を振って答えた。
「まさか!?『ガチカレ』のこと?なんでキミがそれを知ってるの!?』
なんということだろう。こんな男の子が失踪前の茉都香の秘密を知っているだなんて。
「ナニそれ?」
“・・・違ったらしい。茉都香、ゴメン。”
「き、気にしないでちょうだい。それでその秘密っていうのは何なの?」
どうやらわたしの早合点だった。
「知らないなら言わない。」
「何でよ。言うだけ言っといて言わないなんてズルい。」
“う…なんだかわたしまで小学生のペースに引きずり込まれてるみたい。”
「誰にも内緒だって約束したからね。」
“クッ個人情報がダダ漏れのわたしと違って、小学生の方が守秘義務を固く守ってるわ。なんて感心してる場合じゃない!”
「『ガチカレ』だって内緒の秘密だったんだからね!わたしは茉都香の行方を捜してるの。早く見つけないと命が危ないかも知れないのよ!」
そう凄く内緒の秘密だった。見てなさい、こうなったら絶対聞き出してやるんだから。
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