潜入捜査

「まろひゃろきゃれひ?」

乃梨子というコは、わたしのおごってあげたアイスキャンデーを頬張りながら、おうむ返しに聞き返して来た。


「そう…茉都香の彼氏。ボーイフレンドとか、みんなに内緒で付き合ってるとか、そんな男の子の話をしたことない?」

“『ま』しか合ってないし!頼むから食べるのか喋るのかどっちかにしてくれないかな。”


「知ってるよ。茉都香ラブラブだもんね。」


「ホントに!?一体誰??」

遂にわたしは本丸に行き着いた!


「『ガチカレ』の忍キュン!」


「はい!?」


「知らない?『ガチで恋する最高の彼氏』略して『ガチカレ』。今、ゲーム女子に一番人気のスマホゲームじゃん。」


「ごめんなさい。わたし、あんまりそういうの詳しくなくて。」


「ま、仕方ないか。そんなかの忍君ってイケメンキャラクターにめちゃハマってたよ。小遣いかなりつぎ込んでたもん、あの子。」


“茉都香あんた・・・。”

彼女の禁足地に足を踏み入れてしまった。これ以上立ち入ってはいけない気がする。


「知らないなら教えてあげる♪ちなみにわたしの推しカレは、この聖キュン!」

乃梨子がスマホの画面を、わたしの顔面に押しつけんばかりに突き出して観せる。

“ダメ、引き返すのよ栞!!”


2時間後、わたしはようやく解放された。結局、乃梨子からはゲームの恋人以上の話は聴き出せなかった、てゆーか『ガチカレ』については、かなり詳しく叩き込まれた。わたしの潜入捜査は大きく後退を余儀なくされた。



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