第49話
これを禁断のクソゲーたらしめている――ベス神の加護の正体とは!
「ボタンを固くされてるんだよ!」
「……え?」
「どうした大門、何かあったか?」
「え、いやー、その。えっとなんていうかですね……」
大門は目が泳いでいた。なんだ、こんなに恐ろしい事実なのに!
「しょっぱくないですか?」
「何がだよ!」
「いや、神の加護とかいうやつってもっと派手なんじゃないかと思ってたんで! 地味過ぎませんか!? そんな地味なのが神の加護なんですか!?」
「何が地味だ……。考えてみろ、攻撃手段を一次元増やされてるんだぞ!」
ゲームは、何処まで行っても二次元だけの問題になる。
クソゲーバトルもまた然り。俺が見る限りしっかりメンテの行き届いたコントローラー・本体を用いて、出来るだけ審判がゲーム自体に集中出来るような環境が創られている。
しかし――このゲームは現実世界のコントローラーに異常を与える。
二次元でありながら三次元への攻撃を行ってくる……。まさに神の所業だ。
「俺たちゲーマーにとっちゃあ、コントローラーってのは手足同然。今の審判たちは筋肉に針金を通された体操選手みたいなもんだ……。舐めてたぜ、神の加護!」
「……すいませんけどどうしてもしょっぱくしか見えませんね」
大門は置いておいて、ここまで恐ろしいゲームは――封じねばならない。会場も何人かはこの異常に気が付いているらしく、悲痛な叫びが上がっている。ゲーマー故に分かるこの恐ろしさ――
会場はまさにこの禁断のクソゲーの空気に呑まれてしまった。
「アイアム・ルールブック」
剛迫の、静かな、しかしシャープに空間を切り裂く声が届くまでは。
剛迫ほどのゲーマーが目の前の相手の繰り出した「加護」に気が付かないはずがない。しかし剛迫の突き出した右手の切れ味は、平時とまるで変わりなく。己の進む道を切り拓くように振るわれる。
「戦場を舞い飛びなさい――無駄に厳格なる審判達よ!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
目を離したその間に、審査員が絶叫していた。
急遽、視線がスーパースーパーサッカーに戻される。そこに繰り広げられていた光景は、
『レッドカード! モッチョッチョ選手、退場! 二人目の退場者です!』
「UZEEEEEE! レフ! レフ! UZZEEEEEEEE!」
3人が3人とも、既に退場者数名を出していた。試合開始からわずかに数分の出来事である。審査員たちは罵声を飛ばしたり親指を真下に向けていたりと、思い思いの抗議を行っている。
そう。このスーパースーパーサッカー。
あり得ないほどに審判が厳格なのである。
そりゃもう理不尽の領域。敵味方関係なくしょっちゅう試合を止めてはイエローカード・レッドカードの応酬であり、ほんのわずかなラフプレーすらも許されることはない。しかも対戦相手のCPUは頭が悪いためにこっちが気を付けていてもラフプレーをし、そのたびに試合は止められる。
そして更にうざいのが、対戦相手のレッドカード4枚(5枚で没収試合)になってからのCPUの動きの変化。対戦相手はラフプレーをしなくなる代わりにルーチンがラフプレーを「誘う」ように動き、レッドカードが起きやすくなる。
これらの要素のせいでまともにサッカーをすることは不可能。まるでお嬢様学校のサッカーのような超紳士プレイが求められるのである。
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