第12話
「あそこで拿捕することが出来ればよかったのだがね、流石に相手が悪かった。……許して欲しいなどと言わないが、理解はしてほしい。奴らを捕らえる数少ないチャンスだったのだ。そしてそのチャンスを逃した今、何も情報を与えないわけにもいかない。結果、君をより危険な方向に巻き込んだというわけだ」
「うーん、でも、どうせあんな風に仕掛けてくるんだったら迷惑度は変わらないと思うわよ? いちいち授業を遅延されるのも困るし」
「お前は何で危険の基準がなんかズレてんの?」
ほんっと、目が離せないというかなんというか。きっとこいつの脳内では俺達常人では考え着かないようなご都合主義が巡っているんだろう。
石川さんもそれは感じたのか、少し苦々し気な表情で、
「まあこちらとしては君の反発を招かないことは好都合だが、本当に相手は侮れない相手でね。……奴らの本拠地であるエジプトに至っては、我らの手すらほとんど及ばないのだよ」
「エジプト……エジプトに奴らの本拠地が!?」
今、クソゲーブームなる最悪の波が襲っているという爆心地・エジプト。そこにクソゲーを世界中に広げようとしてるやつらの本拠地があるというのは、関連性を疑わざるを得ない。
まさか。まさかとは思うんだけど。
「ああ。最近発見されたベス神の神殿はエジプトにあるからね、当然のことだ。そして彼らは、エジプトにおいてクソゲーの情報をよりかき集めやすくするために、学習をより進めるために……クソゲーブームを起こした」
「!!」
憶測が確信に。
確信が理解に。
理解が怒りに変わっていくのを、胸の熱さで感じる。
――おかしいとは思っていた。
クソゲーが流行るなんて、何か大きな力が動かないと起こりえない悪夢だ。
エジプトの人達は今も狂ったクソゲーブームに踊らされている……。胸に溶岩を詰められたように熱が上がっていく。
クソゲーを流行らせるなんてことが出来る奴らがいる。
そして世界をクソゲーに染めようとしている。
俺の大好きなゲームが、全部褐色に染め上げられ悪臭を放つものになる。
そう思うと、命が燃え、魂が熱される。
「そこにあるクソゲーハウス等の施設に、奴らは出入りし放題だ。そして奴らは、観客を含めた人々の、クソゲーへの反応も欲しがっている。君をエジプトに連れ去れば、そこでクソゲーバトルをさせることだろう」
「……俺が……」
「ん?」
迷うことなんかない。相手の場所は知れている。
この熱は、この熱は、直接叩き込まないと――収まらない!
「俺が奴らを叩き潰―――す!」
怒りに任せた。
すべてを任せた。感情のままに叫んだ。心のままに、魂のままに。
「俺が奴らを叩き潰す! 絶対に、絶対にだああああ! クソゲーブームなんてアホみてえなことを引き起こせる連中を放ってなんかおけるか、そんな悪夢はこの俺が終わらせてやらあ! 絶対に、絶対にだ! おのれSHITS、神秘の国のエジプトを汚しやがって! 絶対に許さねえぞ!」
これほどの義憤が俺を突き動かしたのは始めてた。絶対的な悪の出現に、その暴虐などという言葉すら生ぬるい文化侵害テロとでも言うべき蛮行に、全身が燃え盛るようだ。
クソゲーブームを起こしたのは奴ら! エジプトを汚したのは奴らのせいである! 絶対に絶対に絶対に絶対に! 許してはいけない超危険存在ども!
「一鬼君!」
ここで剛迫の声。悪いな剛迫! これはお前でも止められねえ、なんて言おうとしたが、
「私も乗ったわ! 潰しに行きましょう、SHITS!」
キラキラとした目で、こう言われた。
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