第24話
『その因縁は突然にいいいいいいい! 彼女達の間に何があったのか、我々は知る由もありません! しかし、知る必要も無いのです! 彼女達は今ここで出会い! ぶつかり合う! その事実だけが、今ここにある! 黒翼の蝶と、黒衣の魔導士! 折れるは翼か、魔法の箒か! その未来は今、ここで創られるううううううううううう! 剛迫 蝶扇VS! 須田 蘭火! 熱き女達の戦いが、今! 幕を開けます!』
実況を終えると、会場からは割れんばかりの大歓声が上がった。
しかし俺と四十八願。そして、あの女――須田の付き人だったナイトの三人だけは全員黙って、ステージ上の二人を見ている。
本来ならばこの間に不死川を探し出したかったところだが、四十八願の攻撃の初動から全て止めて見せる実力者の監視付き。ここを動くことは出来なかった。
出来ることは、剛迫の実力を。そして俺達の力の結晶であるギガンテスタワーを信じることだけ。
今回は正式な審判もついている――。文字通り、信じることしか出来ないのだ。
「審判、三人なんだな。本来」
「そうだね。大会だと五人に増えるけど。先攻後攻があって、先攻の方が先に審判二人に自分のゲームをやらせることが出来るよ」
「先攻の方が有利なのか?」
「場合によるね。どっちが有利ってことは、あんまり無いかな」
ナイトを常に警戒しているためだろう、四十八願の言葉に余裕が無い。それが今の状況の不安を煽る。
実況はまずは審判という体を騙る生贄を一人一人紹介し、その後に二人にマイクを渡した。
『さあさあ! お二人様、どうぞ! この戦いの抱負を!』
最初は須田から。
首を右に傾かせた奇妙な姿勢のままで、じろりと審判を見て一言。
『1』
『はい?』
『うるさいから貴女は『1』』
『いやいや、勝負の抱負ですよこれ!? 私の評価点ですかそれ!』
『4』
『はい?』
『私が勝つ可能性』
『は……はあ! なんだか分からないけど、凄い自身アリと見ましたー!』
会場はよく空気を読み、何だかよく分からないだろうがうおおおおおおおおおおおおおーーーーと歓喜の咆哮を上げる。
『続いて、剛迫さん! 抱負を!』
次にマイクが回った剛迫。
壇上に立つ、俺のゲーマー仲間。清楚にして優雅の家元・剛迫 蝶扇。
彼女は果たしてこの場で、どんな顔をするのか――
『ミュージック№フォーティーフォーッ! スタンバイ!』
「イエス!」
どこからともなく声が聞こえると、会場全体の音楽が切り替わった。
それは、おどろおどろしく、余りにも奇妙なテンポを刻む楽曲で、一気に会場の空気が変化する。
「おおおおおおおおおお!」
「こ、これは!?」
「剛迫さんが絶対に相手を倒すと決めた時の曲だあああああああああ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 処刑用BGMキタコレーーーーーー!」
ややあって、会場は熱狂に包まれた。
ステージ上の剛迫はマイクを受け取ると、びしっとキレッキレの動きで須田を指さす。
『覚悟なさい。貴女が舐めた、この私……千変万化の姫術師は、貴女のクソゲーを必ずや下回ると決めたわ!』
ステージ上で、爆竹が数発爆発した。
色とりどりのライトが乱舞し、音楽の音量は増していき、観客の興奮は右肩上がりになり――今まさに、ボルテージは最高潮となる。
『貴女の罪は、私の仲間と、私のクソゲーを弄んだこと……。故に私は、貴女を黒蝶の舞いと共に叩き伏せる! 運命を騙る道化師の奇術の前に、ひれ伏しなさい!』
そして花火が爆裂し、俺達以外の全員の観客が立ち上がって歓喜した。
俺は今すぐにでも消えたくなってきたが、我慢してステージ上でとても楽しそうにしてる剛迫を見つめ続ける。
こっち見てウインクした。
やめろ、こっちみんな。
『さーーーーーーーーーーーあ! お二人の気概を受けて、いよいよ盛り上がってまいりましたクソゲーバトル! では、お二人とも! 製作者席にどうぞ!』
そして壇上の二人は、ステージの中央に設置された二つの席につく。何に使うものなのか、目の前にはキーボードが置かれている席だ。審判達は彼女達に向かい合う形になっていて、今か今かとコントローラーを握って待機していた。
『では! もう待ちきれない方も多いでしょう! 早速、バトルを始めたいと思います! 先攻後攻を決めるルーレットを、僭越ながらこの私がさせていただきます!』
赤に『剛迫』。黒に『須田』と書かれたルーレットを回すと、球は赤に吸い込まれる。
『先攻・剛迫! 後攻・須田! 決定いたしました! ではでは、審判の方々、自分の画面にそれぞれのゲームの表示を! カウントダウンを始めます、会場のみなさんもご一緒に!』
『スリー!』
『ツー!』
『ワーーーーーーーーーーーーーーーーーン!』
『レッツゴー・クソゲー・バトーーーーーーーーーーーーーーーーウ!』
試合開始のゴングが、鳴り響いた。
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