透明な心

***


「…で、葉山ちゃんと麦倉むぎくらちゃんは誰か良い人いないの?」

「全然いないです!飲み友達ばっかり増えてますねぇ」

「…私もそんな感じです。」



久々の会社の女子会の話題は、やっぱり恋愛話。一つ上の副島先輩は、5つ歳上の彼氏ともう四年も続いているらしい。

でも、私と同期の麦倉ちゃんはその手の話題はさっぱりで。


社会人になったら、自然と素敵な人と出会って、自然と恋人になれるものだと思っていた。

でも、そんなの嘘。実際は会社とアパートの往復で1日は終わるし、近所のスーパーでも電車の中でも何の恋愛イベントも起こらない。




「そういうけど、葉山ちゃんは前の人と別れてもう二年でしょ?葉山ちゃん、私の中では常に男を切らしてないイメージなんだけどなー。」


「ふふ、先輩。なんですか、その変なイメージ。」



そんなイメージを持たれていたなんて。

実際は、お淑やかな箱入り娘の先輩が、四年も続く彼氏がいて、やることきっちりやってることの方がすごいっていうのに。


でも、正直羨ましい。

少し前に別れてから、私生活が上手くいかなくて。意外にプライベートと仕事が連動してるタイプだったんだもん。


充実してる先輩が羨ましい。



「そういえば、来週から始まる原田神社のお祭り。あそこの屋台の手相占い、よく当たるって評判みたいですよ。葉山ちゃん、近所なんだし今度占ってもらったら?」


「あぁ、来週からでしたっけ。学生時代はよく行ってました。いい未来分かればいいんですけど。」

「大丈夫だよー、きっと。占ってもらったら、後で教えてね。」


先輩のいい加減な返事を愛想笑いで誤魔化して、きっと当たらないだろうけど、占ってもらうのもアリかな、なんて考えるのだった。


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平行線の向こう側 皆川くるみ @seachan410

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